◆北畑氏の心に潜んでいたものは?
前回に続いて、北畑発言を取り上げ、内容について具体的なコメントを加えてみます。
北畑氏の発言の背後にあったのは、1つは彼のエリート意識でしょう。
心底で、目先の自利を追い求めて、マネーギャンブル的な営為を繰り返す人々に対して、軽侮する気持ちがあったということです。
彼らの目先の相場にとらわれる、いわば狭隘な営みに対し、差別的な心理が潜んでいたのかも知れません。
多くの官僚に共通する心理です。
今ひとつは、デイトレーダーたちの中に混在する金満家たちに対する嫉妬でしょう。
確かに、より適正なトレードをするためには前述したような情報分析が必要です。
しかし、それほど汗を流さず、労苦を負わず、多額の財貨を手にすることができるのもまた事実です。
能力もあり、苦労もしている自分の方が報酬が不当に少ないと感じている不満が、はからずも口吻に出てしまったということです。
実際、幸運な資産家ならば、パソコンを操作するだけで、数日で数億円を手に入れることも可能です。
それらを不労所得と感じるのは当然かも知れません。
多くの労働者たちが工場で額に汗しながら得る一生分の所得を、わずか数日で手に入れるからです。
しかし、もしそれが不当であり、好ましくないというのならば、愚痴をこぼし、遠吠えをするのではなく、投機活動によって得た巨富を国家的な規模で再分配するという方法を考えるべきでしょう。
財貨の潤沢な富者から、日々の生活に窮する貧者に所得を移転するということです。
それは、所得に対する累進課税の上昇率を大きくすることによって可能です。
つまり、高所得者ほど税率を大きく高めるということです。
それによって増幅した税収は、低所得者の生活保障に充当します。
低所得者の医療保険や介護保険を無料にし、基礎年金の財源を全額税金にするなどの施策を実現できます。
そうすれば、万民の生活不安は大きく改善されます。
憲法(25条)で謳った「健康で文化的な最低限度の生活を営む権利」を名実ともに確保することになります。
社会不安の解消にも、大きく貢献するでしょう。
社会病理(犯罪、モラル荒廃など)の克服にも明らかに役立ちます。
北畑事務次官は、このような変革を可能にする権力の中に位置しています。
法案作成やその立法化の中心的役割を担っているからです。
少なくとも、「デイトレーダーには無議決権株でいい」、「議決権を与える必要はない」と考えるなら、まず手始めに、その法案成立に尽力すべきです。
大きな革新を始動させるでしょう。
以下、次回へ