◆デイトレーダーの何が問題か?
前回に続いて、北畑発言をもとに、デイトレーダーの意義について私見を加えることにします。
確かにデイトレードは、社会的にもネガティブな側面はあり、場合によってはインモラル(不道徳性)を内包していることは確かです。
極論すれば、資本主義の徒花(あだばな)ということです。
次のような理由からです。
・必要不可欠性がない。
デイトレードが排除されていても、経済活動が大きく疎外されることはありません。
国民生活には、何ら影響を与えないでしょう。
デイトレーダーが消えても、国民の経済生活は依然、昨日の延長線上にあります。
デイトレーダー以外の国民にとって、デイトレードは無くても不利益を被りません。
・生産性がない。
デイトレードは、基本的に資金が株主間で移動するだけです。
株式の所有者が移転するだけです。
そこから直接に富(経済財)を生み出すわけではありません。
本質的には、プレイヤーたちのゼロサムゲーム(損益の総和がゼロ)です。
・ギャンブル性が強い。
投資は、短期になるほど投機性を帯びます。
賭博(ギャンブル)と同質化します。
これによって得た巨額の投機利益は、あぶく銭や不労所得的な側面があるのは否定できません。
それは、勤労とか、勤勉とか、地道な努力とかの対極にあるものです。
時には、それらを軽侮、嘲笑、冷笑します。
モラルを害する要因になり得ます。
マネーギャンブルによって、「お金を儲けて何が悪い」、「たくさん儲けて何が悪い」という発想、価値観、風潮が蔓延(はびこ)れば、社会にとって健全とは言い難いでしょう。
・株式市場の攪乱要因になる。
デイトレーダーがより多く介在することで、株価は実態とかけ離れて激しく乱高下することになります。
大量の資金が、利を求めて資金が目まぐるしく変転するからです。
数時間、否、数分ごとに市場は大きく動揺します。
それにより、株価は正当な価格から大きく乖離し、荒れ乱れます。
・反社会勢力に悪用されやすい。
株価操作、インサイダー情報などによって、犯社会集団(暴力団など)が多額の利益を手にしているということがしばしば報道されています。
確かに、巨額な資金が動き、賭博性があり、秘匿性の強い資本取引市場は、裏社会の人々にとって魅力的であり、彼らの付け入る余地も大きいでしょう。
ブラックマネー(アングラマネー)の徘徊を許します。
以上のように、デイトレードには少なからぬ負の側面があることは確かです。
これらは、克服されなければならない資本主義の大きな難題といえます。
資本主義の最大の特性である自由競争、市場原理主義の再検証と修正を迫られる可能性があるからです。
いずれにせよ、今回、公共の場で産業経済政策のトップにある人間が、「バカ」などと決めつけたことは、あまりにも軽率で品位を欠くものでした。
そこが投資家や一般人の大きな反発と反感を巻き起こしたのでしょう。
権力の座にある彼は、自らの言葉の重みを再認識すべきです。
彼らには、舌禍を反省の糧にし、国民のための行政に鋭意尽力することが求められています。