◆北畑発言のどこが問題か?
少し前、経済産業省のトップである北畑事務次官の発言が、大きな物議を醸しました。
講演で、投資家たちを「バカ」、「浮気」、「無責任」などの言葉で、大いに虚仮にし、こき下ろしたからです。
投資家たちから騒然と反論や批判、攻撃が沸き上がりました。
この発言は、1月25日、同省の関連団体の講演会(企業関係者ら約130人が出席)で行われました。
北畑隆生事務次官は、ただちに弁明や謝罪の言葉を述べました。
もちろん、保身のためです。居直れば、地位、権能が脅かされます。
しかし、綸言汗の如しです。
一旦、口から出た言葉は、出た汗が体内に戻らないように消えません。
実に軽率であり、軽薄なミスだったと言えますが、ここには彼の本音が素直に表現されていることも確かです。
この発言には、各省庁の高級官僚たちの本心が象徴的に集約されていると言っても良いでしょう。
彼らの普段のものの考え方、価値観、国民に対するスタンスが表れているというわけです。
しかし、彼らは、社会的に大きな影響力があります。言動には、大きな責任があります。
権力の中枢にあるからです。
大きな行政的、政治的権限を握り、国のあり方、行方を差配します。
気軽な非公式な場の発言とはいえ、本音を看過することはできません。
そこで、この発言について、コメントを加えてみることにします。
北畑発言については、ウェブ(ネット)上で、子細に紹介しているページはほとんど見当たらないようです。
そこでまず、問題となる発言部分の詳細を紹介した一紙の記事(08年2月8日、朝日新聞)を引用させてもらいます。
もちろん、発言内容について全てが不適切で批判されるべきものというわけではありません。
中には、大いに共感でき、的を射ているものもあります。
そこで、本文中、賛同できる部分はアンダーラインを付けて、そして、問題となる部分、ないし異論のある部分は太字で表示させてもらうことにします。
読解をスムーズにするために段落を多くしました。
<会社は、株主ではなく、社長以下の社員、取引先、地域住民が協力しあって利益を生み出す。
他方、堕落した株主がたくさん現れてきた。株主は所有者だが、経営能力が無く、いつでも株を売って離脱できる。デイトレーダーは、朝買って夜売り、会社のことは何も考えない。(会社の)所有者というのは納得感がえられない。
危ない表現をすると、株主は能力がないという意味ではバカ。すぐに売れるということで浮気者。無責任、有限責任で、配当を要求する強欲な方。
スティール・パートナーズになると、株主・経営者を脅す。いい株主と悪い株主が分かれてきた。
日本は、企業の存続を重視する企業文化がある。短期的な利益追求の株主と日本の経営者は違って、いい会社はむしろ株主軽視。配当より内部留保重視が実態だ。
会社が株主を選ぶための制度として、種類株式がある。デイトレーダーには無議決権株でいい。
本当は競輪場か競馬場に行っていた人が、(株売買の)手数料が下がったので、パソコンを使って証券市場に来た。
最も堕落した株主の典型だ。バカで浮気で無責任だから、議決権を与える必要はない。買収防衛策の一助にもなる。配当で少し優遇すればよい。>
この発言の内容について、1つ1つ少し細かく検証してみましょう。
以下、次回へ