夜スペシャル・1

夜スペは選別教育!


「夜スペシャル」などというから何だと思うでしょう。
いかがわしいスペシャルではありません。
都立中学校主催の選抜教育(エリート教育)のことです。
学力優秀な生徒を対象としています。
参加者は、入室テストにより選抜されます。

東京の杉並区立和田中学校で08年1月から始まりました。
このプロジェクトの主導者はリクルート出身の民間人校長として知られる同校の藤原和博校長
です。
謳い文句は、「夜の学校の教室で、大手進学塾の指導が受けられます」となっています。
「月謝を通常の半額程度に抑えて家庭の負担を減らしつつ、塾が持つノウハウで、志望校への進学後にも生きる学力を伸ばすのが狙い」ということです。

この「夜スペ」を担当するのは、SAPIXの中学部です。
難易度の高いテストに合格しなければ入塾できないことで知られている大手進学塾です。
授業は平日週3日ほど、午後7時から3時間近く、数学と国語を中心に行われます。
土曜日の午前、およそ3時間の英語を組み合わせることもできます。
面談による進学相談を受けることも可能です。

月謝は、2教科が1万8000円、3教科だと2万4000円です。
SAPIXは、宣伝効果になるからと、この低料金(通常の半額ほど)の学習指導を請け負ったようです。
SAPIX東京本部は、「学校との連携から新しい事業展開にもつながる」と期待を込めた発言をしています。

開講の説明会で、藤原校長は、「学校の授業についていけない生徒にはむしろ負担になる。無理に参加しないで」と注意を促しました。
明らかに、選別、差別の姿勢です。

これは、学力優秀な子供に学校当局の力を注ぐということです。
先生や学校当局に無限のエネルギーがあるわけではありません。限られています。
一方の生徒たちに多くを注げば、他方の生徒たちには配分されるエネルギーも配慮も、当然少なくなります。
つまり、優秀な生徒たちに手厚く指導をすれば、そうでない生徒たちに対する対応は手薄にならざるをえません。
それを承知の上の導入でしょう。

このような、配慮や処遇の差別化は、公立の学校では決して妥当ではありません。
広く国民・住民から集められた税金で運営されているからです。(1人当たり、70~80万円)
公教育の場は、やはり「子供たちみんなのために」が原則であるべきです。
少なくとも、より優秀な生徒たちに対する集中的な特別待遇には大いに問題があります。

続きは次回へ。