▲財政政策とはどのようなものか?
経済が危機の様相を帯び始めると、経済政策の動向が大きく浮上します。
経済政策が物価、景気の動向、経済成長などに大きな作用を及ぼすからです。
それは、経済から、ひいては社会全体の舵取りとなっています。
その舵の取り方(政策選択)一つで、人々の暮らしは大きく左右されるといってよいでしょう。
社会が混乱し、日々の生活が困窮に陥るか、あるいは余裕を保ったり、より豊かになれるかということです。
それを私たちは、バブルの発生とその収束の過程で如実に経験しています。
はるか以前には、人々は恐慌とそこからの脱却で辛酸をなめました。
今もまさに、サブプライム問題に発する混乱から、金融危機が拡大し、インフレは亢進し、景気は後退しようとしています。
世界的な同時性を帯びています。
経済政策は、ますます重要性を高めています。
その人為の操作に私たちの生活の行方が大きくがかかっていると言っていいでしょう。
そこで、今回はこの経済政策について、まとめてみることにします。
最低限必要な認識を得る骨格について整理してみたいと思います。
まず、経済政策は、突き詰めれば、社会に流れるお金の量の調節です。
それによって、経済活動に様々な刺激、インパクトを与えようとするものです。
通貨の流通量の増減によって、需要の拡大や抑制を図ります。
この経済政策の柱は、その操作主体によって次の2つに分けられます。
・財政政策…政府による通貨量の増減。
・金融政策…中央銀行による通貨量の増減。
※広い意味では、規制緩和、貿易政策(関税政策など)、為替介入、社会保障政策、労働法制の改革なども経済政策に含まれます。
厳密な意味(狭義)での経済政策について説明します。
好況時には、通貨量を減らします(引き締め)。
金利が上がって、お金が借りにくくなったり、手持ちのお金の量が減って、設備への投資や物品の購入(消費)が抑制されたりします。
その結果、インフレの亢進やバブルの発生が抑えられたりします。
不況時には、この逆になります。
通貨量を増やします(緩和)。
金利が下がって、お金が借りに易くなったり、手持ちのお金の量が増えて、設備への投資や物品の購入(消費)が促進されたりします。
それによって、デフレから脱却や景気の回復がはかられたりします。
では、これら2つの柱について、もう少し詳しい説明を加えましょう。
まず、財政政策です。(→参照)
財政政策には、主に次の2種があります。
・歳出の調整…好況時には支出を抑制、不況時には支出を増加。
・歳入の調整…好況時には増税、不況時には減税。
歳出の調整では、公共事業などの公共投資が大きな役割を持っています。
ただ、減税や政府支出を増やす財源として国債を発行すると、国債価格が下落し、金融市場の金利が上がる可能性があります。
金利の上昇は、投資や消費を抑制するので、景気にマイナスの影響があります。
では、歳入・歳出の会計主体(財源)はどのようになっているのでしょう。
これには、一般会計、特別会計、財政投融資の3つがあります。
その規模(平成20年)は次のようになっています。(→参照1,参照2)
・一般会計…83兆円
・特別会計…368兆円 (他の会計との重複部分を除いた純計額は約178兆円)。
・財政投融資…14兆円 (平成18年末の資金の残高は約289兆円)
この3つの会計は、お互いの間で資金移動が頻繁に行われています。
繰入、貸付け、国債引受けなどの形で、やり繰りされ、融通されています。
従って、計上される金額には重複が多くなっています。
そのため、流れを的確に把握するには難しくなっています。(→参照)
ちなみに、今世論をにぎわしているいわゆる「霞ヶ関埋蔵金」は、主に特別会計の中にあるとされています。
資金を運用した利益の積立部分です。
バランスシート(貸借対照表)上では、資産から負債を除いた資本・剰余金部分にあたります。
2006年度末で196兆円に上ると見積もられています。
民主党の細野豪志氏は、衆院予算委員会(1月28日)で、“埋蔵金(余剰金)”の総額は次のようになるという試算を明らかにしました。
特別会計:約68兆円、独立行政法人:約17兆円、
独立行政法人の関連会社と公益法人:約11兆円、 総計:96兆円。
これらの中から、天下りした官僚の豊かな手当てに、かなりの額が流用されていると考えられています。
国家財政については、塩爺こと塩川正十郎・元財務大臣が、「母屋ではお粥をすすってって辛抱しているのに、離れで子供がすき焼きを食ってる」と揶揄したことがありました。
この離れが、まさに特別会計です。(もちろん、母屋とは大赤字の一般会計)
お粥をすすっているのは国民、すき焼きを食っているのは官僚、業界などということになるでしょう。
莫大な埋蔵金のおかげで、彼らは高級なすき焼きを食っているわけです。
なお、財政政策は、別の視点から次の2つの大別されます。
・積極的財政政策…意識的、裁量的に実施する財政政策(フィスカル・ポリシー)。
・消極的財政政策…ビルトイン・スタビライザーによる自動的、制度的な財政政策。
※ビルトイン・スタビライザー(自動安定化装置)は、あらかじめ組み込まれた財政制度のことです。累進課税制度や社会保障制度などです。景気を自動的に安定させる働きをします。
ビルトインスタビライザーの機能については、流れを図示すると次のようになります。
好況期 - 税収増大=所得減少 →消費や投資を抑制
\失業者減少→社会保険給付の減少/
不況期 - 税収減少=所得増大 →消費や投資を刺激
\失業者増大→社会保険給付の増大/
次は、金融政策です。
金融政策については、次回の記事で説明を加えます。