●学力と性質は関係するか?
学力、能力と人間性や性質とは、比例するでしょうか?
30年以上多くの子供たちと親しく接してきた経験から言えることがあります。
それは、両者はほとんど全く無関係だと言うことです。
知力、学力が優れているほど人間的に優れ、性質が良好であるというということは全くありません。
とりわけ、優しさ、素直さ、礼儀正しさなどについて言えます。
他に、明るさ、社交性、神経質、ヒステリー性などについても同じです。
それらは、学力や運動能力、芸術能力などとほとんど相関がありません。
これは、知力や学力の高さと、食欲や性欲との間に相関性が認められないのと全く同じです。
それどころか、しばしば逆行することさえあります。
つまり、学力や能力には極めて優れているが、人間性には劣り、性質が粗悪であるということです。
学力や能力的にレベルが高い人間が、優しさ、礼儀の正しさ、素直さにおいて低レベルであることもあります。
残念ながら、それは否定できない事実です。
それは、毎日のニュース報道を耳目を傾けていても理解できるでしょう。
最も知力に優れているはずの人間が、悪質な贈収賄事件や詐欺事件、背任事件を引き起こします。
それどころか、超一流の学力、学歴を誇りながらでも、わいせつ事件や暴行事件まで犯す人間もいます。
時には、殺人を犯すものまでも現れます。
ヒトラーやポルポト、スターリンやサダム・フセインも、知力は極めて優れていました。
超一級の頭脳を有していました。
しかし、彼らのやったことは大量虐殺の指揮・厳命です。
日本の戦争指導者たちも、学力、知力においては群を抜いていました。
しかし、その結果はどうであったか、改めて語るまでもないでしょう。
ただ、人間は演技する動物です。
そこに人間の最大の特徴があります。
相手によって、状況によって見事に自分を変えます。
千変万化です。カメレオン以上です。
誰もが役者です。
狡猾で卑しいものほど、それを相手を騙すために利用します。
自分の利益のためだけにそれを利用します。
当然、知的能力の高い子供ほど、自分を巧みに装うことができます。
頭のいい子ほど演じる能力に長けています。
そのため、学力の高い子ほど、彼の本性、真の人間性を見誤ることはあります。
従って、学力、知力の優れた子供ほど、その本性 本心を見抜くことは容易でないと言えます。
でも、時が経つにつれ次第にそのメッキは剥がれてきます。
彼ら本来の「地」が現れてきます。
3ヶ月もするとだいたい本性がはっきりと分かるし、3年もすればほぼ完全に分かるようになります。
結局のところ、同じ脳の作用、働きであっても、知力、能力と心、精神性の間に、明確なリンケージ(連関、つながり)はないということです。
それぞれ別の部分が司ってるということです。
人間より礼儀正しい動物はたくさんいます。
人間より信頼できる犬もたくさんいます。
それが真理だと言うことです。
なお、他に、次のようなものも知力、学力と相関しません。
リンケージは認められません。
・感情
快い、不快、楽しい、苦しい、面白い、悲しい、憎いなどの心の動きです。
いわゆる喜怒哀楽です。
動物にも、人間と同じように存します。
逆に、高学歴者、学識者の中にも感情の乏しい人はいます。
・容姿・容貌
見ただけで、その人の知力や学識は、まず分かりません。
卒業アルバムなどの集合写真を見ただけで、どの子が最も知力のある子供か当てることはほとんど不可能でしょう。
これは、成人でも高齢者でも同じです。
「人は見掛けに寄らない」ということです。