母親が娘を殺害

なぜ自分の娘を絞殺したのか?

実の母親が妊娠中の娘を絞殺するという痛ましい事件が起こりました。
報道によると概要は、次のようになります。

大阪府警泉大津署は26日、大阪府和泉市の綿布織物業、藤木美鳥容疑者(57)を殺人容疑で逮捕した。
調べによると、藤木容疑者は25日午後5時半ごろ、同府泉大津市のマンションに住む娘の無職、藤木良美さん(29)の自室で、携帯電話の充電器のコードを良美さんの首に巻き付け、絞殺した疑い。
良美さんは妊娠中だったが、体調を崩していたことから、藤木容疑者は出産に反対しており「出産を巡って娘と口論になり、首を絞めて殺した。金銭面でも娘の面倒を見るのに疲れた」などと話しているという。
母親は事件後、海に飛び込んで自殺を図ったが、死にきれなかったという「無理心中しようと思い、コードで首を絞めた」と容疑を認めている。  

母親は、良美さんが精神的に不安定なことや、同居男性(28)との交際に悩み、出産に反対していたといいます。
「娘の面倒をみるのに疲れた」と供述し、娘の将来を悲観したとも語っています。

ここのあるのは、やはり娘を自分の思う通りにしようとする強い意識です。
29歳の娘に対し、まだ自分の支配下、管理下に置こうとしているという心理です。
ここには、娘を支え、理解し、守ろうという姿勢に欠けています。
つまり、真の愛情に欠落しているというわけです。

母親には酷なようですが、独善的で身勝手そのものです。
だからこそ、娘である女性は、母親金銭的に負担をかけ、精神的に不安定になり、母親の望まないような妊娠をしたとも言えます。
それらは、それまでの母親の娘に対する育児姿勢、養育姿勢の延長上にあるのです。
無理心中しようとし、娘を殺害し、自分は死にきれなかったことにも、それは現れています。
断罪されてもやむを得ないでしょう。

子供は、思春期に差し掛かれば、親の思い通りにするのはほとんど無理です。
思い通りにしようとすればするほど、子供はそれに反発し、反抗します。
怒りや憎しみを溜め込み、ルサンチマンとなっていきます。
心の歪み、荒廃、病みをもたらし、深めていきます。

子供に指導、教示、しつけ、監督などができるのは、せいぜい10歳前後までです。
思春期に入る頃までです。
それ以後は、会話やコミュニケーションを深める中で、自分の考えを伝えることができる程度です。
それも、信頼関係や敬愛の念のない限り、子供に対する働き掛けが効を奏することはありません。
逆の方向に作用することさえあります。

思春期以後は、子供がどんな考えを抱こうと、行動をとろうと、親はほとんどあきらめるしかありません。
受け入れるしかないのです。
それまでの育児・養育の延長上にあるのだから、その結果は甘んじて受けるしかありません。
仮にどんな不幸なことが起こっても、子供と一緒に十字架を背負うしかないのです。
覚悟が必要です。

思春期以後も子供を自分の思い通りにしようとするのは、身勝手で、自己中心的で、独善的に過ぎます。
子供から嫌悪され、恨まれ、衝突するのは当然です。

母親に娘の妊娠を中絶させる権利はありません。
母親ができることは、娘を守り、支え、いたわるということだけでしょう。
そして、娘が産んだ子供、つまり自分の孫を大切にし、慈しみ、娘の育児にできるだけ協力するということだけです。

子供のせいで、自分が悩み、苦しみを受けていると考えるのは、まさに身勝手な責任転嫁です。
子供を自分の思い通りにしようとするから、悩み苦しむことになるのです。
自分の価値観に従わせ、自分の利益になるようにしようとするからそうなるのです。

この母娘は、実家周辺では仲のいい親子として知られていたといいます。
仲が良かったのではなく、ただ密着していただけだったのでしょう。
母親が、成人の娘を手元に置き、支配し、管理し、干渉しようとしていたということです。
つまり、目に見えない鎖で縛り付け、思い通りにしようとしていたということです。
その可能性は十分にあります。

母子が密着し過ぎていたのは確かでしょう。
もっと早くからお互いに離れていれば、違った人生になっていたでしょう。
もっとずっと早い時期から、適当な距離を取っておくべきでした。

それにしても、父親の存在感がありません。
父親はいなかったのでしょうか?蚊帳の外だったのでしょうか?
気になります。