万引き少年が殺人

青年を刺殺した万引き少年の代償

万引き少年が、彼を捕まえようとした青年を刺し殺すという痛ましい事件が起きました。
報道によると、概要は次のようになります。

6日午前0時50分ごろ、大阪府寝屋川市高宮のコンビニエンスストア「セブン-イレブン寝屋川高宮店」で、アルバイト店員の上内健司さん(27)が食料品を万引しようとした2人組の男を発見。
約160メートル追跡し、路上で男1人ともみ合いになり、胸を刺されて間もなく死亡した。大阪府警寝屋川署捜査本部は、強盗殺人容疑で工員の19歳少年を、強盗致死容疑で内装業のアルバイト少年(15)をそれぞれ逮捕した。

彼らが万引きしようとしたのは、缶ビールやアイスクリームなどでした。
料金にして数千円程度だったと思われます。

少年が、数時間汗を流せば十分得られる金額です。
それを安易に奪い取ろうとしたわけです。
最低限のモラル、人間性の欠如以外の何ものでもありません。

幼い頃から、そのような基本的な心を育てるしつけを受けてこなかったのでしょう。
どのようなしつけをしてきたのでしょう?
どのような親子関係にあったのでしょう?
2人とも帰宅後に衣服を着替えるなど証拠隠滅も図っていたそうです。

仮に、万引きの罪で逮捕されたとしても、警察の留置場に数日間ほど拘束されるか、長くても少年鑑別所で数週間ほど観護措置を受けるに留まったでしょう。
2人はこれまでにも窃盗事件を起こしたことがあったといいますから、少年院送致の可能性もないわけではないでしょう。
それでも、数カ月を超えて収容されることはなかったと思われます。

しかし、19歳の少年は殺人を犯してしまいました。
長ければ10年を越える懲役刑を受ける可能性があります。
青春時代を高い塀の中に収監されるということです。
それ以後の人生も、厳しくなるでしょう。
結婚も、就職も、自分の子供に対する教育も、困難を強いられるはずです。
数千円の万引きの代償は、あまりに大きいものでした。

刃物という凶器を持っている限り、殺人を犯す可能性は常にあります。
彼は、そのようなことに想像が全く至らなかったのでしょうか?
自分が持っている刃物で殺人を犯し、その代償に自分の青春と将来を差し出さなければならないということです。
彼の刃物は、自分の身を守るどころか、自分の身を滅ぼす凶器となってしまいました。

刺殺された青年は、少年たちを160mも追跡したといいます。
正義感が強いとともに、2人の少年に対抗できるだけの体力があるという自信もあったのでしょう。
彼は中学時代はサッカー部に所属し、足も速かったといいます。

しかし、無防備で追跡するのは危険に過ぎました。
相手が凶器を持っている場合は、自分も何か防具となるものを持つというのは、護身術のイロハです。
厚手のタオルや座布団などでもかまいません。
あるとないとでは大違いです。
私が青春時代、10年近くひたすら熱いエネルギーを注いできたある武道ではそう教えられてきました。
どんなに拳を磨いても、鉄の刃物には敵わないと言うことです。

もちろん、青年は迅速に警察に通報するだけでも十分だったでしょう。
コンビニの防犯カメラには、彼らが写っていたはずです。
悪党たちは、いずれ捕縛されたはずです。

誠実な青年が素手で立ち向かったのはとても残念です。
有為な前途を閉ざされてしまいました。
家族や周りの人々の悲しみ、落胆もさぞかし大きいことでしょう。
何とも無念なことです。