◆民主党にとって、どちらが戦いやすいか?
自民党総裁選の幕が切って落とされました。
候補は、ほとんど麻生太郎氏と福田康夫氏に絞られ、一騎打ちの様相です。
党内の支持は、福田氏に雪崩を打ったように膨らみ始めています。
この総裁選は、政局に大きな影響を与えます。
次の衆議院選挙を戦うときの自民党の顔になるからです。
この選挙は政権選択の選挙です。
どのような新しい政治状況が生まれるか、今度の総裁選は決定的な影響力を持っていると言えるでしょう。
野党、とりわけ民主党にとっては、手強い相手となるでしょう?
新総裁、新総理の国民の人気、支持が高まれば、選挙でより不利になることは明らかです。
ようやく見えてきた政権奪取の勝機は、一気にしぼむことになります。
安倍首相が辞任を表明するまでは、「次期首相としてふさわしい人」として、世論調査では、麻生氏がトップを占めていました。
たとえば、9月2日放送されたフジテレビ「報道2001」で示されたアンケート結果が典型です。(首都圏の成人男女500人を対象に8月30日、電話調査)
それによると、次のようになっています(概数)。
麻生太郎 19%、小沢一郎 15%、小泉純一郎 10%、福田康夫 10%、
石原伸晃 5%、谷垣禎一 3%
この時点では、麻生氏は福田氏の約2倍の人気と支持を集めていました。
他の調査も、大体同じ傾向を示していました。
しかし、総裁選を間近に控えた現在、国民の中でも福田氏に対する期待は急速に高まりを見せています。
民主党にとって、どちらが戦いにくい相手となるでしょう。
結果的に麻生氏のように思われます。
小沢氏と対比、対峙させた場合、福田氏より麻生氏の方が優位に立つと考えられるからです。
選挙では、意外とムードとかフィーリング(雰囲気)などが重要な選択要因になることは少なくありません。
過半の国民にとっては、細かな政策よりも、そちらの方に目がいきやすいからです。
新聞の政治・経済の記事にきちんと目をやっている国民は高々1割に満たないでしょう。
テロ特措法や労働契約法など重要法案についても一定の理解を有している人はごく一部に限られているといって過言でありません。
日々の生活に追われ、時間的な余裕がないということもあります。
国民は直感を大切にします。イメージを重視します。
「人は見た目が9割」も、真実を突いています。
国民は、しばしばそれに近い投票行動をとります。
政治家にとっても、キャラクターが大事です。極めて大事だと言って良いでしょう。
小泉前首相は、この点で抜きん出ていました。
具体的に、どのような人間性だったのか振り返ってみましょう。
・勇猛果敢
郵政民営化法案が参議院で否決されたとき、民意を問うために衆議院を解散して選挙に打って出ました。「自ら顧みてなおくんば、千万人といえども我ゆかん」(吉田松陰)という不動の姿勢を示しました。
侠客から政治家(元逓信大臣)に身を転じた祖父の血と影響を強く感じます。
・大人物の風格
ものに動じず、威風堂々としていました。細かなことに拘らず、鷹揚な風がありました。
すっとぼけたようなところがありました。人を食ったようなところがありました。
鈍感であるとさえ見えました。「鈍感力」の流行と符合していたのも、奇異な偶然です。
攻撃を受け流し、かわすことにかけても名人でした。小人の象徴である逆上、ヒステリー性とは遠く無縁でした。
・意外性
サープライズ人事が代表です。人の意表を突く、興味深く、感服するような行動をしばしばとりました。奇人とさえいわれています。その行動は、信長の桶狭間に通じるものがあります。
・明朗快活
ほとんど常に笑顔を持っていました。明るい笑顔、時には無邪気な笑顔です。国民の心には十分訴える魅力があります。
また、米国大統領の前では、プレスリーの真似をするというパフォーマンスまで屈託なく演じました。
彼は、野球を趣味の1つとするスポーツマンでもあります。大リーグの開幕戦(東京ドーム)の始球式でもかなりまともなストレートを投げました。高校時代は野球ゲームで3塁を守ることが多かったそうです。
・個人攻撃をしない
この点は、他の多くの政治家たちと比べると歴然です。多くの政治家は、しばしば辛辣な個人攻撃をします。無用、不毛な中傷にさえ思えるものです。多くの国民はそこに不快感と嫌悪感を感じます。
小泉前首相は、他人に対する非難・攻撃はほとんど行いませんでした。人々は、そこに爽やかさ、前向きな姿勢を感じ取っていました。
・情に厚い
ハンセン病原告団との面会の席で小泉前首相は涙を流し、元患者の話に耳を傾けました。小泉前首相は、国に控訴を断念させました。
また、小泉前首相は、ブラジルに訪問の際、多くの日系人を前にしたスピーチの際、感極まって涙を浮かべ声を詰まらせました。
国民の多くは、こういうエピソードに弱いものです。国のトップリーダーに人間味を感じるからです。
・尊大なところがない、フランクである
威張ったり、高圧的だったり、お高くとまっていたりするようなところがありませんでした。
高い地位と権力にも関わらず、気位を臭わせるような嫌味がありませんでした。
独身である小泉前首相が、記者たちとの会話の中で性生活について触れられると、「首相になってからアレがたまってたまって…。しばらくは右手が恋人だ」、「最近、毎朝ムスコがビンビンになる」、「この前、うっかり夢精してしまった。とても濃いやつを」などと冗談を飛ばしていたそうです。
俗世間の男たちの猥談と変わりがありません。身近に感じられるゆえんでしょう。
以上のような、キャラクターが、国民の共感と支持を広く集めていたわけです。
結局のところ、基本的には次の2点に集約されます。
どのくらい親しみを感じるか いざというときどのくらい信用できるか、ということです。
政策的には、小泉前首相が進めた路線には、疑問も残ります。
多くの国民にとって、納得と賛同を得られないものもあります。
郵政民営化も本当に国民が支持していたかは疑問です。
自分たちにとってはっきりしたメリットが見えないからです。
さらに、経済政策については、受け入れがたいものが多かったでしょう。
特に格差社会の拡大をもたらしたことに対しては、多くの国民が不服、反発を抱いているものと思います。
実際、多くの普通の国民にとって、経済的な利益については、小泉前首相の推し進めた政策の恩恵を受けることはできませんでした。
それでもなお、小泉前首相は高い支持率を保持してきました。
キャラクターのゆえんです。
このようなキャラクターが新しい国のトップリーダーには確保されているでしょうか?
福田氏にしても、小沢氏にしても、キャラクター的には、小泉前首相に引けを取る部分が少なくないように思います。
民主党にとっては、国民の人気のより少ない自民党総裁である方が選挙には有利になります。
しかし、何かのきっかけで、新総裁が支持を急激に高める可能性もあります。
そうなると、総選挙に打ち勝ち、政権を奪取することは難しくなるでしょう。
民主党が政局を有利に進めるためには、次の3点が重要なポイントになるでしょう。
1.国民の人気を博するキャラクターを備えた人物が代表となる。
ただし、小沢氏が代表として不動である限り、この可能性は低いでしょう。
2.国民の強い支持を集められる政策を前面に掲げ、押し出す。
年金の税源化と最低年金の完全保証、時給最低限度額の大幅アップなどです。
3.相手の不祥事を利用する。
自民党議員のスキャンダルなどによる敵失を待つということです。
ただ、あまりにも消極的な姿勢です。生産的ではありません。
闘いの幕は、切って落とされました。
大波乱の幕開けとなるでしょうか?
歴史の転換点となるでしょうか?
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