▲サブプライムローンと証券化の意味
世界の経済を震撼させているサブプライム問題は、このローンの証券化に大きな原因がありました。
では、なぜサブプライムローン債権は証券化されたのでしょう。
もちろん、メリットがあるからです。
では、どのようなメリットがあったのでしょう。
今回はそれを概括してみます。
証券化の主なメリットをまとめると、次のようになります。
・債権(資産)の分割(小口化)が可能となり、その売買を容易にする。
・債権(資産)の現金化(流動化)が可能となり、資金調達の有力手段となる。
・リスクの分散が可能となる。
・債権(資産)を売却して、負債を返済することができる。(オフバランス化)
・資産が減ることにより、自己資本比率や総資本(総資産)利益率が向上する。
※総資本(総資産)利益率(ROA)=当期純利益÷総資本(総資産)
しかし、何事も二面性を持ちます。
確かに、住宅ローンの証券化によって、住宅ローン会社などの金融機関は、リスクを投資家(主にヘッジファンドや資産運用会社など)に移すことができます。
ローンが焦げ付いても、その損失は証券を購入、保有している投資家が負担することになるからです。
不良債権は、「ババ抜き」の「ババ(ジョーカー)」と同じで、最終的な所有者が損失を被ります。
しかし同時に、住宅ローン会社などはローンに伴うリスクを投資家に移転することができるため、融資に甘くなります。
安易な貸付が助長されます。
実際、リスクの高い融資が横行しました。
貸付は熱気を含んで増殖、肥大し、バブル状態を引き起こしました。
さらに、証券化は大きなリスクを内包させることになります。
リスクの所在が複雑、不鮮明になるのです。
証券が作られる過程で元のローン債権を分割したり、他の金融商品と組合せたりする結果です。
現実に、リスクの分散がリスクを世界中に拡散させることになりました。
一旦、ローンの不良債権や焦げ付きが発生すると、どの金融機関や投資家がどれだけの損失を抱えているのかが分からなくなります。
疑心が疑心を呼び、不安が不安を招きました。
証券の購入者、引き受け手は市場から逃散し、証券価格は暴落しました。
多くの金融機関やファンド、投資家が膨大な損失を抱え込むことになりました。
この構図は、まさに偽装ハンバーグの場合と類似しています。
牛肉100%として売られていたハンバーグの一部、例えば10%に豚肉が使われていたとします。
そのハンバーグは信用を失い、売却できなくなってしまいます。
1割引きで売れず、全体が廃棄物となってしまいます。
高級リンゴのごく一部が腐っているだけで、丸ごと商品価値を失うのと同じです。
一部がだめだと全てがだめになってしまうのです。
時として、メリットはデメリットに反転します。
サブプライムローンの場合は、ほとんど唐突にプラスがマイナスに逆転しました。
まるでオセロゲームのようにです。
証券化商品の一部に組み込まれたサブプライムローンは、翻ってこの金融商品全体の価値を毀損してしまったのです。
世界経済のシュトゥルム・ウント・ドラング(疾風怒濤)です。
行く手に大きな暗雲が立ちこめています。
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