証券化とは?

証券化とは何か?



サブプライムローン(高金利の低所得者向け住宅ローン)に端を発した世界的な金融市場の混乱が問題となっています。
この問題のポイントは、住宅ローンの証券化にあります。
では、証券化とは何でしょう?(→参照1参照2


まず、証券とは、財産に関する権利を表す証明書です。
いわば権利証書です。
この証券には、次の2種類があります。
証拠証券…権利の所有者が確定し、売買の対象にならない。
          預金証書、保険証券、受取証書など。
有価証券…権利の所有者を移転することができ、売買が可能。
          株券(株式)、(国債、地方債、社債などの)証券(債券)、小切手、
          手形、商品券、抵当証券、(商品券などの)金券、入場券など。
 ※ 有価証券は、多くの場合、小口に分けることが可能。


証券化とは、資産を有価証券にして売買を可能にすること(流動化)をいいます。
いわゆる投資と同じ性質のものです。
インカムゲイン(利息や配当)やキャピタルゲイン(売買益)を目的とします。
証券化の対象となる資産には、次のようなものがあります。
  不動産、貸出債権、住宅ローンなどの各種ローン


証券の売買方式には、主に次の2つがあります。
SPC方式…特別目的会社(SPCspecial purpose companies)が資産を購入し、                           資産担保証券(ABS asset based securities)を発行。
信託方式…資産を信託銀行が預り、小口化した受益証券を発行。


この証券化の資産所有者にとってのメリットは何でしょう?
次のようなことが考えられます。
・資金調達手段が多様化できる。従来の直接金融(株式や社債による資金調達)、
  間接金融(金融機関からの借入)以外の方法となる。
・保有資産の有効活用ができる。
・資産圧縮が可能となる(オフバランス効果)。保有資産を売却し、借入金などを返
  済することにより、資産と負債を圧縮することができる。それにより、ROA(総資産
  利益率)などが向上する。
・債権を現金化すること(キャッシュフロー)ができる。これを新たな融資の原資とする
  こともできる。
・不良債権(資産)の処理ができる。証券化により、売却が可能となる。
・貸倒れや不動産の下落などによるリスクを分散できる。


一方、証券の購入者(投資家)にとってのメリットは何でしょう?
次のようなものがあります。
・投資対象(選択可能な商品)が増える。
・投資リスクの分散ができる。(ポートフォリオ(分散管理)効果)
・インカムゲイン(利息や配当)が期待できる。
・不動産などの場合は、その運用益を受け取れる。
・不動産などの場合は、価格の値上がりを期待できる。


もちろん、良いことばかりではありません。
デメリットもあります。
資産所有者などにとっては、次のようなものがあります。
・対象とする資産の選定や分析のためのコストがかかる。
・売買機関の設立や運営などにコストを要する。
・利用手続きが面倒で、販売、管理などのための諸経費も必要となる。
・金融市場の影響を受けやすい。


一方、証券の購入者(投資家)にとっては、次のようなデメリットがあります。
・予定以下のインカムゲイン(利息や配当)しか得られないことがある。
・証券の市場価格が下がり、元金が回収できないことがある。
・証券の売却ができないことがある。


サブプライムローンの証券化は、金融機関の保有する貸付債権の証券化でした。
金利が10%以上にもなることが購入者(保有者)にとっては魅力的でした。
しかし、07年6月には、延滞率が約15%(住宅ローン全体の延滞率の約3倍)に達し、金融不安が一気に高まりました。
貸し倒れなどで資金回収ができず、証券の価値が暴落するということです。


よいことばかりではないのは、どの世界でも同じです。
とりわけ、サブプライムローンの証券化については、現在弱点が大きく出過ぎてしまっているようです。
いかに首尾よくソフトランディングができ、被害を最小限に抑えられるかが大きな課題となっています。


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