●モンスターペアレントの心理、背景は?
最近、モンスターペアレントのことが大きな話題になっています。
学校の現場では、この問題が吹き荒れています。
まさに、「教育の現場を怪物が徘徊している。モンスターペアレントという怪物が!」(共産党宣言のもじり)というわけです。
モンスターとは、怪物、化け物、悪党などの意味です。
モンスターペアレントとは、そのような親と言うことです。
現場や親たちには、「しょうもない親」「面倒を起こす親」「手の掛かる親」などの意味で使われています。
彼らは、学校や教師に些細なことでも、言い掛かり(難癖、クレーム)を付けてきたり、非難・攻撃をしてきたりする親です。
たいてい大声でヒステリックにわめきたてます。暴言を吐きます。
時には、恫喝に及んだり、暴力行為に及ぶ場合もあります。
教師に土下座を要求することもあります。
冷静に会話をしたり、きちんと説明を求めるということはありません。
それができません。
体だけ大きくなった手に負えない我がままな幼児に似ています。
たとえば、生徒が授業内容を十分に理解できていないようだからと、学校に残して補習したとします。
すると、「なぜ、遅くまで学校に残した!」と文句を言い、抗議をしてきます。
逆に、授業内容が十分に理解できていないまま、やむを得ず生徒を帰宅させたとします。
すると、「なぜ、放課後、わかるまで補習をしない!」と非難してきます。
また、危険なことをしていた子供に、「危ないから止めなさい」と注意したとします。
すると、「なぜ、うちの子だけに注意した!」と大声を張り上げてきます。
あるいは、授業中、ケータイを操作していたので取り上げたとします。
すると、「うちが買って与えたものをなぜ取り上げた、ドロボーではないか!」と抗議をしてきます。
さらに、給食費が滞納になっているので、請求したとします。
すると、「義務教育なのに、なぜ払わなければならないんだ!」、「うちの子供が嫌いなものばかりで、しょうがなく食べてやったから、払う必要はない」などと強弁したりします。
ではなぜ、モンスターペアレントはこのような行動をとるのでしょう?
理由はいくつか考えられます。
その主なものをあげてみましょう。次のようになります。
1.言い掛かり、クレーム、暴言が、ストレスのはけ口となる。
彼らの心の中には、ストレスや欲求不満が充満しています。
それは、たいていうまくいかない夫婦関係や不快な職場が原因となっているものです。
その背景に、恵まれない育ちが考えられます。
親から十分な愛情を受けてこなかったと言うことです。
親から、疎外、支配、抑圧を受けてきた可能性が大です。
言い掛かり、クレーム、暴言がひどい場合は、親から虐待的な仕打ちがなされていたことも疑われます。
彼らは子供時代、友達からも真の友情や信頼は得られてこなかったでしょう。
いじめなどに遭ってきたかも知れません。
さらに、それに子供時代に受けた教師の仕打ちが絡んでいることもあります。
少なくとも誰からも真の愛情を受けられなかった可能性は大です。
そういうことに対する怒りや憎しみ、いわば怨念が心の底に沈殿しています。
彼らは、その負のエネルギーを、言い掛かり、クレーム、暴言を吐くことで、埋め合わせを図ろうとしているわけです。
大いなる憂さ晴らしです。
ここには、それまで受けてきたことの報復の意味が含まれています。
だから、理由は何でもよいのです。
常に、ちょっとしたきっかけを狙っています。
しかも、他人の痛みには、極めて鈍感ですが、自分の痛みには非常に敏感です。
すぐに切れやすく、逆上しやすくなっています。
さらに、たいてい被害妄想が重なっています。
モンスターペアレントは、一様に、ヒステリック、自己中心的である、温かさ優しさに欠ける、信頼性に欠ける、という共通した資質を持っています。
そういう体質は、乳幼児の頃から植え付けられ、しっかり染み付いたものなのです。
モンスターペアレントも、あくまで育ちの延長上にあるのです。
彼らのストレス解消、フラストレーション解消は、他人の不幸を実現することによって完結します。
彼らにとって、まさに「他人の不幸は蜜の味」となるのです。
彼らが、教師を休職、退職に追い込もうとするのは、そのためです。
自殺に追い込めば、さらに言うことはありません。
目的達成です。恍惚に浸ることができます。
事実、気が弱く、優しく、真面目な教師が、しばしば精神的に追いつめられ、自殺に追い込まれています。
2.言い掛かり、クレーム、暴言に、自己満足を見出している。
それらを得意技とし、まるで趣味のようにしている親もいます。
彼らは、言い掛かり名人です。言い掛かりに、自己陶酔すらしています。
これは、上記の1の理由とも重なりますが、これに劣等感の裏返しが強く絡むことが通例です。
つまり、自分の安っぽい自尊心を、相手の優位に立ち、相手を傷み付けることによって回復しようとしているのです。
彼らが劣等感を抱くということは、子供時代から、ばかにされ、軽んじられ、なめられ、けがされてきた過去があるということです。
その中心は、親です。それに、周囲の人間や仲間が加わることも少なくありません。
親が真の愛情を持ち、彼らを理解し、支え、評価し、肯定し、味方になっていればそのような感情は育ちません。
それがありませんでした。
そのため、彼らは、他人を貶め、けなしすことに自己の存在理由を求めようとしています。
自尊心や自信の回復を図ろうとしているわけです。
もちろん、卑しく、醜く、有害な存在理由ですが…。
しかし、生け贄にされた方は、たまったものではありません。
心身を病ませ、将来を暗転させ、人生を不幸にしてしまうかも知れません。
しばしば、将来を断たれます。
3.慰謝料や賠償など、金銭的利得を得る。
モンスターペアレントの中には、慰謝料、損害賠償などを求める目的で、最初から弁護士を連れて学校に乗り込む人もいます。
チンピラペアレントです。
暴力団も、顔負けです。
彼らは確かに言い掛かりのプロであり、それで生計を立てる主要な手段にしているといいます。
モンスターペアレントも、彼らを真似し、暴力団気取りで脅しをかけてきます。
実際、暴力団員であることもあります。
全国の暴力団構成員は大まかに、見積もって10万人です。
家族を加えれば、数十万人にもなります。
子供が数百人もいれば、その中に暴力団関係者の親がいても不思議ではありません。
確かに、口先一つの脅しをかけて、数万円の利益を得れば、儲けものです。
内職ならば、懸命に励んでも、1時間に高々2,3百円ほどにしかなりません。
数万円をむしり取れれば、100時間分の対価が一気に転がり込んできます。
確かに、モンスターペアレントは、まともな職業はしていないという見方をしている人は少なくありません。
それは、もしまともな職場にいれば、モンスターペアレントであることはマイナスになり、職場で評価されることは難しいからです。
正業から排除されていることも彼らの心を荒らしている原因になっているかも知れません。
以上のようなことが、モンスターペアレントが言い掛かり、クレーム、暴言を突きつける主な理由でしょう。
しかし、社会的な背景もあります。
それは、世の中全体が、けち付け社会、批難・攻撃社会だと言うことです。
ちょっとしたことでも、他人をけなしたがります。弱者に対しては、非難・攻撃したがります。
何でも人のせいにする、自分だけは絶対に正しいと思っている、そういう風潮が蔓延しています。
自分を見つめたり、感謝したり、謝ったりということが、日本の社会から、本当に廃れてしまいました。
「すいません」、「有り難う」という気持ちと表現が消えようとしています。
職場などでも、しばしば心無い言葉、暴言が飛び交っています。
社会全体がチンピラ化の方向に進んでいるかのようです。
さらに、現代社会は激しく厳しい競争社会だと言うことです。
突き詰めれば、弱肉強食社会ということです。
勝利第一主義です。勝てばいいということです。
当然ながら、弱いことは嫌忌され、弱者は軽んじられます。
ここには、経済第一主義(拝金主義)も大きな影を落としています。
とりわけ格差社会は、この見事な象徴です。
これらは、荒んだ社会、病んだ社会をもたらしていきます。
それがモンスターペアレンツを生み出す大きな土壌を用意していると言っていいでしょう。
モンスターペアレントも、直接、間接に社会の申し子ということもできるわけです。
では、この厄介なモンスターペアレントに対する対処、対策はどのようにしたらよいでしょう?
これについては、次回(できれば明日)述べることにします。