高3いじめ自殺

高3いじめ自殺の真相は?


神戸市須磨区の私立滝川高で今年7月3日、同校3年の男子生徒(当時18)が、校舎から飛び降り自殺しました。
いじめが原因とされています。
いじめは昨年から続き、次第にエスカレートしていったようです。
同級生の少年(17)らが金品を要求していたとして恐喝未遂で逮捕されました。

高3生といえば、ほぼ成人です。
彼に対して、どのようないじめが行われていたのでしょう?
新聞などの情報をまとめると、次のようになります。

・「うそ1回につき罰金1万円」などと、罰ゲーム名目で繰り返し金銭の要求がなされた。
 一方的に積み上げられた彼の“借金”は、50万円に達していた。
・「うそをついたから5万円払え。払わなければ何をされるか分からないぞ」などという脅迫メールが頻繁に送られていた。
・放課後、生徒の机の上に美術の授業で使う粘土が塊にして置かれていた。
・後頭部の髪だけを角のように残す丸刈りに近いモヒカンガリにされた。
・弁当箱に、母親が入れたのとは別のおかずが詰め込まれた。
・偽のブランド品を、正規の商品とほぼ同じ値段の高額で売りつけられていた。
・繰り返し使い走りをさせられていた。
・飲食店などで、仲間の飲食代の代金を払わされていた。
・複数の同級生から、被害者は「金の収入源」などと周囲に吹聴されていた。
・男子生徒の裸の下半身の写真や、強引に開脚させた姿の動画をインターネットのブログに載せられていた。
・ブログに生徒個人に対する中傷がしばしば書き込まれた。

まともな青少年、まともな人間のやることではありません。
高校生たちのモラルとか、人への思いやりとかは一体どこへ行ってしまったのでしょう。
加害者たちには、温かさも、優しさも感じられません。
彼らがそのまま社会に飛び立つことを考えると背筋が冷たくなります。

彼らは、どのような育ちをしたのでしょう?
どのような家庭環境の中で生活しているのでしょう?
それらに目をやることはとても重要なことです。

では一方、高校側の対応はどうだったのでしょう。
生徒を教導、管理・監督する責任があります。生徒を守り、育てる義務があります。
高校では、次のような対応がなされました。

・被害生徒の机の上に粘土が置かれているのを担任が見つけ、嫌がらせを疑ったが、被害生徒が「大丈夫です」と答えたため、それ以上詮索しなかった。
・生徒が自殺した後、生徒から「いじめがある」との指摘を受けたにもかかわらず、高校では現金を要求していた生徒の話をうのみにした。
 しかし、同じクラスの34人のうち11人が「いじめがあった」と回答した。3分の1です。
・実態を把握しないまま、兵庫県側に「いじめは認められなかった。成績が落ちたのが自殺の原因ではないか」と説明した。
・桐山智夫校長は「(認識が)甘かったと言われても仕方がない」と語った。

このような学校側の対応は、どのいじめのケースでも大体同じです。
ひどい場合は完全にアンタッチャブル(触れない)を決め込みます。
隠蔽を図ります。
責任をとらされることを恐れるからです。

加害者の親たちは、扱いにくいと言うこともあります。
たいてい子供と同質です。
下手をすると、恫喝、脅迫されます。
しかも複数います。団結される恐れもあります。

このいじめは、何人かの生徒で行われたようです。グループもありました。
しかし、いじめには必ず中核となる人間がいます。
それは多くの場合、2,3人です。
彼らは、極めて荒々しく粗暴で、かつ非情です。

そして、彼らを中心に数人以上のいじめグループが形成されます。
いわゆる取り巻き連中です。ボスに迎合し、おべっかを使う者たちです。
彼らはボスを恐れ、ボスに気に入るように行動します。
もし、ボスに睨まれれば、自分がいじめの標的にされるからです。

取り巻きは、時としてボス以上に非情な暴力的な行動に走ることがあります。
ボスに、認められ、仲間に一目置かれるためです。
リンチで殺害などを誘発する場合は、たいてい彼らが下手人になります。
ボスは、このようなとき、直接に手を下さないで、にらみをきかせているだけです。
前面に出ないのは、後で取り巻きに罪をなすり付けて逃げ切るためです。

このようないじめの核となる人間は、必ず1クラスに2,3人はいると考えてよいでしょう。
そして、彼らの取り巻き連中は、たいてい5,6人います。
一方、いじめに反発する子供もクラスに5,6人いるはずです。
さらに、積極的にいじめを止めさせようと何らかの働きかけをする子供も2,3人います。
残りの十数人は、傍観者か、都合の良い方に味方します。風見鶏です。
ただ、彼らが時に、全体の流れを作ることもまた確かです。

私は、これを「1:2:4:2:1の法則」と称しています。
10人の人間がいれば、必ず1人は非常に悪質、2人前後は悪質、4人ほどは普通、次の2人前後は良質、そして残りの1人は非常に良質だと言うことです。
だいたい、どんな集団の場合でも、この法則は当てはまります。
無論、大人の社会でも同じです。
試してみてください。

今回の自殺に追い込んだいじめにおいても、必ず中心となる人間がいたはずです。
そして、何人かが彼らに迎合し、悪乗りしたと言うことでしょう。
しかし、結果的には、それが被害者を追いつめました。
便乗した人間の罪も、決して軽くありません。

このような残虐で悪質ないじめを抑え、解消するためには、必ずその中核となる人間を割り出し、彼らに強い働きかけを行うことが必要です。
時には、拘束や厳しい懲罰が必要です。
少なくとも、強い牽制は行わなくてはなりません。

彼らは、心の底から歪み、荒れ、粗暴になっています。
ちょっとやそっとのことでは、他人の力で更生できる見込みはまずありません。
彼らは、産まれたときから不適切な育児や養育を受けています。
支配、抑圧、管理、干渉、疎外、軽侮、拒否、放置などです。
時には暴力的な仕打ち、虐待を受けていた可能性もあります。

総じて、両親の仲も険悪です。冷え切り、いがみ合っています。
家の中では、罵声、怒号が飛び交い、暴力の嵐が吹き荒れていることもあります。

彼らはそのような中で、親の人間性や資質を刷り込ませてきました。
同時に、怒りや憎しみを充満させてきました。
彼らは、常にそのはけ口をいじめなどの加虐に求めています。
いじめは、ストレス解消、憂さ晴らしとして、彼らには重要な意味をもっているのです。

したがって、更生は至難でしょう。
表面的には善導できたと思っても、ほとんどの場合は、再び悪事に手を染めてしまいます。
期待は、見事に裏切られるでしょう。
かくして、被害者、犠牲者は、続き、積み重なることとなります。

だからこそ、厳しい対応が必要なのです。
中途半端な対策では効果はなく、意味をなしません。

では一方、被害者やその家族は、このような悪質、邪悪ないじめを受けたとき、どのような対処をしたらよいのでしょう?
その基本は、できるだけ多くの真実を白日の下に晒すということです。
それは早ければ早いほど、そして徹底すれば徹底するほど好ましいことに間違いありません。

生半可な対応をしていると、やれ「ちくったな」などと、いじめや暴力をエスカレートする可能性があります。
悪党たちにとって、告発などで悪事がばれることほど都合の悪いことはありません。

そのため、被害者や家族は、できるだけいじめや加害の証拠を集めることです。
それには、事実の記録ノート、ヴォイスレコーダー(録音機器)やカメラ、医師の診断書などが役立ちます。
それらをフルに活用すべきです。
悪党たちは、常に証拠隠滅を図ろうとするし、それに実に巧妙だからです。
今回の加害者たちも、「ふざけ合いだと思っていた」と弁明し、逃げ切りを図ろうとしました。

こうして、証拠が十分出揃ったところで、解決への行動に一気に踏み出します。
通常は、まず学校に相談するでしょうが、この時点で問題が解決することはまずありません。
上記の学校の対応例でも、それは理解できるはずです。
従って、どんどん相談先、解決先を広げていくことです。矢継ぎ早に行うということです。
教育委員会、専門のいじめ相談室、人権擁護局、警察の少年課などです。

もし、親に真の愛情があるなら、自己犠牲を厭わず、これらの機関に働きかけを行わなければなりません。
解決に漕ぎ着けるまで懸命に頑張らなければなりません。
自分の子供の人生の一大事です。
親として当たり前です。

もし、親が保身的になり、自己犠牲や尽力をためらったらどうでしょう。
子供の信頼や敬意は永遠に失うでしょう。
それは、親も子供も不幸にします。人生を暗転させかねません。

いじめを受ける子供はたいてい優しく、非力で、個性的です。
粗暴ではないし、喧嘩も強くありません。
そこが悪党たちの狙い目になります。

この高3生も、身長が150cmほどだったと言います。
同年齢の男子と比べても、かなり小柄です。腕力も欠けていたでしょう。
まさに悪党たちには格好の餌食だったわけです。
自分たちは、反撃を受ける恐れがないということです。
悪党たちは、常に卑怯です。

いじめ、加虐により自殺に追い込むというのは、単なる殺人以上に悪質で残酷です。
自分の手を汚さずに極悪非道を完遂するからです。
相手に、痛みばかりでなく、屈辱、恥辱、悲痛、苦悩を極限まで与え続けて、最後に自らの命を絶たせるからです。

中途半端な解決に終わらせてはなりません。
解決は徹底しなければなりません。
親の責任も明らかにすべきです。
多くの子供たちの未来がかかっていると言えます。