社会保険庁の罪

社保庁の罪はこれだけある


年金の取扱いに対し、社会保険庁のずさんで、違法な処理が大きな問題となっています。
政権の動向にさえ、大きな影響を及ぼしかねないマグマとなっています。

しかし、社会保険庁の具体的な不祥事については、漠然としている方も多いと思います。
その一部しか、理解されていない方も少なくないでしょう。
全容を把握するのは、なかなか容易なことではありません。

そこで、今回は社会保険庁の背信行為、不法行為などについて、できるだけ具体的に書き並べてみることにします。
皆さんは、社会保険庁の罪の多さと大きさに驚くことでしょう。
このような組織がある限り、国民の利益や富は大きく毀損されると言うことです。
これらを列挙してみましょう。次のようになります。

1.年金記録上の問題
・膨大な加入記録の脱漏や誤記を放置した。(いわゆる「宙に浮いた年金記録」問題)
   加入記録の未統合件数…5千万件。
   生年月日の記録漏れ件数…30万件。
・年金記録の原簿として、重要な紙台帳を廃棄した。
・一部の加入者から提示された番号統合の申請を無視した。
※厚生年金では、標準報酬月額(≒月収)の入力ミスも存在。
・未加入の低所得者に対し、本人の承諾なしに、納付免除加入者として記録した。
※年金の加入率が高いほど、市町村に下りる交付金の額が多いため。

2.資金流用の問題
・年金資金を天下り団体などに流出した。
※累積の年金資金流用額は、約7兆円。
※社保庁を解体して新たに立ち上げる日本年金機構は、年金官僚の有力な天下り先になる可能性が大きい。また、外部委託先は、官僚、職員の天下り先として利用される確度が高い。
・受け取った年金資金を年金保養地の建設・運営などに流用した。
※代表例が「グリーンピア」。この建設費は3140億円。年間赤字は約5億円。
※全国の年金保養施設は、年金官僚・職員の有力な天下り先。
・社保庁のコンピュータシステムの経費として年間約600億円を投入した。
 ※このシステムは、「骨董品」とさえ揶揄されていた旧式で非効率なもの。
 ※この導入先のNTTデータとは、最近まで正式な契約書は交わされていなかった。
  NTTデータも、社保庁職員の有力な天下り先。

3.職務上の問題
・窓口職員や担当者が受け取った年金を着服・横領した。
※9月3日時点で発覚した着服・横領だけで、約100件、その総額は約3億4千万円。
これも、氷山の一角である可能性が大。
・社保庁職員のコンピュータ操作は、1日に平均約3時間半までと制限した。
・不親切で態度の横柄な窓口や担当者を放置し、不適切な対応やサービスの低下を許
 した。きちんと顧客の意見を聞かないなど。
※これは、多くの国民の反感・批難を招く伏線になっている。
・年金に関する国民に与えた不利益に対し、政策責任者、年金官僚、社保庁トップ・幹
部などが責任をとらず、免罪を放置した。
※免罪は、モラルハザード(倫理の廃退)を許し、増殖させる動因になっている。

ウンザリされたことと思います。
では、なぜ、このような無数の不祥事が間断なく連鎖していたのでしょう。
それが究明されない限り、解決への前進は得られません。

最も根本的な原因は、それが保険であることに求められます。
保険料を原資としているからです。
具体的に、述べると次のようになります。

・保険料は、任意性が強い。未納でも、違法(処罰の対象)にならない。
・財源が特別会計であるため、財務省のチェックが緩い。
※むしろ、一般会計の節約になるため、財務省からの抑制が働きにくい。
・納入に関する記録などの情報処理の分量が膨大となる。
※特に、結婚・離婚・転居・死亡などで情報把握や記録の書き変えの必要が生じる。
・保険料は一律の金額で、無所得者、低所得者にとって負担が大きいため、保険料徴
収がしばしば至難になる。
※彼らは、見捨てられた高齢者となる可能性が高い。
※この点、消費税の方が負担は軽い。(→参照

この問題を解決する最大の方策は、財源を保険料から税金に転換することです。
特に、基礎年金部分です。
原資が税金ならば、問題は激減します。
ほとんどの問題は、大きく軽減ないし克服されます。
次のような理由からです。

・税金には強制力が働く。税金の未納(脱税)は、犯罪になる。
・保険料の徴収、記録、管理に関するコストが大きく軽減される。
※加入の宣伝・勧誘のためのコスト、年金相談のコストなども不要となる。
※結婚・離婚・転居・死亡などの情報把握や記録の書き変えの必要がなくなる。
※とりわけ、事務処理費、人件費などの大幅な削減が可能となる。
・制度が単純化すれば、国民に理解しやすいものとなる。
※単純化により、情報の公開性を高め、不正などを防ぎやすくなる。
・老後の安心が確保されることによって、現役世代の消費が増える。
※国民の消費性向(所得に対する消費の割合)を高め、民間需要を活発にし、景気を
浮揚させる大きな効果が期待できる。

このように、財源を保険料から税金に転換させつことによって得られるメリットは、非常に大きいでしょう。
もちろん、その前に、社保庁や所轄官庁の違法行為、背信行為の当事者を明確にし、彼らにきちんと罪の償いをさせることは不可欠です。

今回の不祥事の罪と責任を組織全体に転嫁させないことです。
国とか、社保庁など組織全体の問題のみとすれば、罪と責任の所在はどんどん曖昧になるでしょう。
真の問題の解決からは、大きく後退することになります。

違法行為、背信行為については、徹底的に犯人探しをすることが求められます。
(犯人探しをするな、というのは犯人の言い分です。)
責任や罪のある者を特定することは避けられません。
結局、悪事を行うのも、その指示を出すのも一人一人の人間だからです。
必ず実行犯、主犯はいるはずです。

確かに、社保庁の職員の大半は、真面目で誠実な方々です。
彼らに罪も責任もありません。
彼らに連帯責任を負わせるのは、不当で不条理です。

それだからこそ一層、明確に責任者、違法者を割り出し、罪責を償わせることが必要なのです。
それを欠かすことはできません。
制度やシステムを変えるだけでは、それらが一部の人間によって、再び歪められ侵食される恐れは大です。
それは心しなければなりません。

システムと人間、両面からの改革が求められています。