▲バブル後、公的資金投入の収支決算は?
サブプライム問題に発する金融や経済の危機を救うため、公的資金などの投入が声高に求められるようになっています。
中央銀行による資金供与や大手銀行が設立した共同基金による融資、投資などです。
日本でも、バブル崩壊後の経済危機、金融危機に対しては、多額の公的資金が投入されました。
記憶に暗い影を落としています。
※多くの場合、公的資金の使用全般を「投入」と言い、そのうち金融機関救済のためのものを「注入」と言う。
このことに関しては、国民の間に喧々諤々(けんけんがくがく)が議論が沸き起こりました。
多くの国民は、税金を原資とする公的資金に激しい批判を浴びせました。
乱脈融資などで危機に瀕した金融機関などを税金で救うな、ということです。
当たり前です。
何の責任も罪もないのに、負担だけは押し付けられるからです。
プラスは得ていないのに、マイナスだけ引き受けるということです。
確かに、経営危機や金融危機を招いた経営者たちには、十分な責任が問われないまま時が経過していきました。
正当な痛みを感じ、責任を果たした経営者たちは多くありませんでした。
罪に償いを果たさないまま看過されました。
やりたい放題をやり、懐を膨らまして逃げおおせた経営者も少なくありませんでした。
しかし、公的資金の投入が、金融危機、経済不況を大きく緩和したこともまた確かです。
明らかに一定の効果は上げました。
公的資金の投入がもっと早期に、迅速に行われていれば、悪化はそれほど深刻化しなかったかも知れません。
この公的資金の本格的投入は、バブル崩壊後5年以上を経て行われました。
後手後手で、小出しになった側面は否めません。
では、なぜ公的資金の投入は適時、迅速に行われなかったのでしょう。
それは、前述したように、多くの国民世論の強い反対、抵抗にあったからです。
それではなぜ、多くの国民は激しい批判を浴びせたのでしょう。
それは、上記の理由以外にもあります。
その最大のものは、公的資金の投入が、寄贈、つまり無償供与のようにとらえられていたことでした。
公的資金の投入の本質は、原則として融資(貸出)、あるいは投資(出資)であるという理解がされていなかったということです。
マスコミの論調もそうでした。
あたかも、一度投入したら、そのままになると言う印象を与えました。
しかし、多くの公的資金の投入は、融資、あるいは投資の形で行われます。
投資の場合、金融機関の株式を購入します。
原資の大部分は、政府が国債を発行することによって得た資金です。 (ただし、国債の償還は税金によって行われる)
債務(借金)の棒引き(帳消し)とされる以外は、それが原則です。
もちろん、融資(貸出)である以上、貸し倒れはあります。
また、投資(出資)である以上、資金が丸ごと毀損する場合もあります。
しかし、それは一部です。
では、日本の金融危機の場合、今までどのくらい公的資金が投入され、回収されたのでしょう。
実に興味深いところです。
これは、サブプライム問題の今後の展開を予測する上でも役立ちます。
そこで、最近新聞で公表された公的資金の収支決算の概要をもとに、これをまとめてみたいと思います。(基本的数値は、朝日新聞07年12月15日朝刊より)
次のようになります。
ただし、推定値も含まれます。(2007年12月現在、単位は兆円)
目的 投入額 回収額 未回収残高 確定損失
預金者保護 19 - 9 10
銀行への資本注入 12 10 2 -
破綻銀行などからの資産買取り 10 9 1 -
一時国有化銀行など 6 5 1 -
合計 47 24 13 10
現在の回収額は、投入額の約5割です。損失額は約2割です。
この割合(5:2)からすれば、将来の回収額は全体の7割くらいになると算定されます。
損失額は3割です。
ただし、預金者保護の未回収残高のかなりの部分が、預金保険料で穴埋めすることが可能です。
また、金融機関から買い取った優先株、劣後債をはじめ、様々な資産の売却益が数兆円規模になると見込まれています。
そうなれば、最終的な国民負担の総額は、大きく圧縮されるでしょう。
朝日新聞では、最終的な国民負担の総額を8~9兆円とはじき出していました。
つまり、投入額の2割ほどです。
回収率は8割となります。
50兆円にも上る公的資金の投入が叫ばれ、訴えられていた頃、戦々恐々とし、強い反感、抵抗感を抱いていたものです。
しかし、実際は、想定されていたほど大きな負荷は与えられなかったということです。
金融危機の深刻化、経済の激しい悪化に比べれば、安上がりのコストだったということです。
コストパーフォーマンスは高かったと言えるでしょう。
政府も経済学者も、その点を明確に伝えるべきでした。
もちろん、公的資金の未回収額(損失額)が、考えていた以上に軽微なものであったとしても、それは国民が望んだことではありません。
本来はしなくてもよい負担であるわけです。
今後のためにも、責任者たちの罪を問い続けることは必要です。
では、最後に、公的資金の金融機関への投入(注入)については、いつ、どの位の規模で行われたのか、その主なものについてまとめておきます。
次のようになります。(→参照)
1990:バブル崩壊
1996:住専処理法が成立し、住専7社に6850億円の公的資金を投入。
1998:大手など21行に約1兆8千億円の公的資金を投入。
1999:大手など15行に約7兆5千億円の公的資金を投入。
2003:りそなグループに約2兆円の公的資金を投入。
ちなみに、バブル崩壊により破綻した銀行と破綻年度は次のようになっています。(太字は主要金融機関)
1995:兵庫銀行、木津信用組合
1996:太平洋銀行、阪和銀行
1997:北海道拓殖銀行、京都共栄銀行、徳陽シティ銀行、三洋証券、山一証券
1998:日本長期信用銀行、日本債券信用銀行
1999:国民銀行、幸馘銀行、東京相和銀行、なみはや銀行、新潟中央銀行
2001:石川銀行
2002:中部銀行
2003:足利銀行
上記の公的資金投入年度や金融機関の破綻年度を見てみると、バブル崩壊後5年以上を経てから生じていることが分かります。
サブプライム問題の大きな正念場もこれから先に待ちかまえているということです。
不幸が起こらないないことを切に祈りますが、その可能性はあると言うことです。
用心しなくてはなりません。覚悟が必要でしょう。
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