南北朝鮮の統一

南北朝鮮の統一は非現実的!



現在、朝鮮半島は分断されています。北緯38度の国境線によってです。
全く体制の異なる2つの国家が並立し、対峙しています。
同じ民族が分裂状態にあります。


長い間分断していれば、血縁関係が希薄になり、文化も次第に異なり、そして言語さえも少しずつ違いが生じていくでしょう。
既に、生活習慣、思想、価値観、宗教意識などには、異質性が浸透し始めています。
民族が次第に分化していくということです。


とりわけ、血縁関係の希薄化は、決定的な影響をもたらしていくでしょう。
かつては、親子、兄弟が南北に分断されていました。
世代が変われば、近縁者は国境の向こう側にはいないということになります。
親近感も同胞意識も、薄れていくということです。


南北両国の政治家も国民も、このことに危機感を抱いています。
とりわけ、韓国は統一省を設け、金大中政権以降は北朝鮮宥和政策(いわゆる太陽政策)を強く推進してきました。
金大中前大統領の後継者である盧武鉉大統領も、太陽政策を継承し、関係の強化に尽力してきました。
先日(10月2日)には、軍事境界線を歩いて越え、金正日総書記との南北首脳会談に向かうパフォーマンスまで演じました。


しかし、このような統一への強い希望や大きな努力が実を結ぶことはあるでしょうか?
現在のところ、それは全く非現実的だと言っていいでしょう。
はかない夢物語にすぎないということです。
大きな理由が2つあります。


まず、経済的に南北両国の格差があまりに大きいということです。
韓国は北朝鮮に対し、GNI(国民総所得)は約35倍前後、一人当たりのGNIは約17倍前後と推定されています(→参照)。
統一した場合、この格差を埋めるために、韓国(の国民)は莫大なコスト負担をしなければなりません。
インフラ整備、社会保障、生活支援など多岐に渡ります。
韓国国民は、公的負担の激増と行政サービスの激減を覚悟しなければならないでしょう。


これは東西ドイツの統一後の様々な経済問題の困難を考えても理解できます。
ドイツの場合、統一時のGNP(国民総生産)は約8倍前後、一人当たりのGNPは約2倍前後とされていました。(→参照
南北朝鮮の経済格差がいかに大きいかが分かります。
これは、統一が極めて深刻な影響を及ぼすことになるか予測させるに十分です。


2番目の理由は、中国の影です。思惑と影響力です。
こちらの方がより根深く、本質的だと言えます。
両国は、同じ共産主義独裁国として政治的血縁にあります。


さらに、北朝鮮は中国にとって戦略的に重要な周辺国です。
属国、家来、傀儡といってもいいでしょう。
支配下、少なくとも強い影響力の下に置く必要があります。


これは、北朝鮮にとっても都合のいいことでした。
政治的、軍事的に強力な後ろ盾を得ることができるからです。
多大な経済的な支援を得ることもできました。


しかし、もし統一によって、北朝鮮が民主化して、手中(勢力圏)から脱することになったらどうでしょう?
中国は、大きな戦略的な前線基地を失うことになります。
東アジアの覇権は大きく損なわれます。
もちろん、それまでの様々な支援も工作の努力も水泡に帰します。


中国にとって、こんなことは、絶対に許し難く、認め難いことです。
従って、韓国主導による統一は絶対にあり得ません。
韓国の統一へのどんな努力も実ることはないでしょう。
政府も国民も、どんなに汗を流し、尽力、奔走しても無駄というものです。


もし、残された方法を模索するとすれば2つあります。
その内の1つは、韓国が北朝鮮に併合されるという形で統一されることです。
韓国は、金王朝の支配下に入ります。
一党独裁の共産主義国家になります。
そして、中国の従属国になります。


これならば、中国は諸手をあげて歓迎するでしょう。
両手を広げて抱きかかえるでしょう。
勢力圏が大きく広がるからです。


もちろん、これは韓国民にとって受け入れがたいことです。
貧困を強いられ、自由を奪われ、辛酸をなめることは目に見えているからです。
アメリカを中心とする西側諸国にとっても、これは全く看過できません。
一党独裁の共産主義勢力が強化され、戦略的な優位性が脅かされるからです。


もう1つの残された道は、旧ソ連で行われたペレストロイカ(大構造改革)のような大政治改革が中国で起こることです。
一党独裁政治が瓦解し、自由主義的、民主主義的な政体が確立するということです。
クーデターや革命的な政変が必要となるでしょう。


中国が複数政党の認められた民主的な政治体制に移行すれば、アメリカを核とする西側諸国も、北朝鮮主導の統一を容認するかも知れません。
しかし、その場合も、金王朝が存続したままの強固な独裁政権の樹立は受け入れないでしょう。


以上のことからしても、朝鮮半島の統一は現実的には不可能ということです。
経済的にも、政治的にも障壁が大きすぎます。
少なくとも、金王朝が崩落し、かつ中国の独裁体制が倒壊するまでは、統一への道は閉ざされているといってよいでしょう。
一度壊されたものを修復するには、至難だということです。


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