■少女が暴行男を殺害した意味は?
15歳の少女が、38歳の男性を殺害するという事件が起きました。
殺されたのは、静岡県掛川市中、会社員松下宏樹さん(38)です。
遺体は、静岡県島田市の山中で見つかりました。
少女は、静岡市内の安倍川河川敷で3日深夜から4日未明にかけ、松下さんに刃物のようなもので脅され、ワゴン車に連れ込まれたということです。
少女は、「車内で殴られたり、アイスピックで刺されたりした」などと供述しています。
車内には、包丁2本とアイスピック1本も残されていました。
県警の調べに対し、少女は「(松下さんに)殺されると思った。逃げようとして刺した」と話しています。
もし、少女が男性を殺害しなかったら、どうなっていたでしょう?
彼女は、たぶん暴力を受け、いたぶられ、強姦されていたでしょう。
その果てに、殺されたかも知れません。
その可能性は大です。
それを避けるためには、彼女は反撃し、刃傷沙汰に及ばざるを得ませんでした。
それが、彼女に残されたほとんど唯一の方法であったでしょう。
結果、過剰反応となり、少女は大きな罪を犯すことになってしまいました。
しかし、窮地を脱するには、それしか選択肢はなかったでしょう。
正当防衛ということです。
もし、彼女が中途半端な抵抗をしていたとしたらどうでしょう。
彼女は、男を完全に逆上させ、さらに激しい暴力を振るわれていたでしょう。
時をおかずに殺害されていた可能性も大です。
このような場合、中途半端な対応ほど事態を悪化させることはありません。
この男は、92年6月にも、埼玉県で女子高生を車で連れ回し、暴行を加えたとして逮捕されています。
警察は、この事件が少女の供述を裏付けるとみています。
この男が、さらに発覚していない性犯罪や、未遂事件を起こしている可能性は少なくありません。
もし、今回、男性が殺されないで、事件が発覚しないまま終わっていたらどうでしょう?
あるいは摘発されても、最大数年間の服役だけで刑を終えていたらどうでしょう?
性犯罪者の再犯率は、極めて高いとされています。
この男が野放しになっていた場合、多くの女性が彼の魔の手の生け贄となった可能性は大です。
たとえば、10人が強姦され、2人が殺されるというようなことも十分あり得たでしょう。
事実、前回の犯罪の後、野放しになっていたことが今回の事件に繋がりました。
しかも、強姦の繰り返しは、最終的に殺人に至るケースも少なくありません。
この意味で、少女は自分の身を挺して、将来の数多くの犠牲者を守ったともいえます。
何人もの、この上なく痛ましい犠牲者が生まれるのを未然に防いだともいえます。
この男性は、約2年前、妻の実家のある掛川市に引っ越して、子供は2人いるということです。
同市内の内装会社に勤務し、よく子供と遊ぶ子煩悩な父親として近所で知られていました。
しかし、8月20日に失踪し、家族から捜索願が出されていました。
近くに住む妻の親類の女性は、「おとなしい人で、奥さんと仕事中でもメールで連絡を取り合う仲のいい夫婦だった。事件が信じられない」と驚いているといいます。
別の女性も、「子供思い。家族の仲もいいし、酒も飲まないし、まじめ。悪い噂は聞かない」と動揺しているそうです。
また、よく一緒に地域の防災活動をしたという男性も「すごくいい人。事件は何かの間違い。真相が知りたい」と語っているそうです。
本当でしょうか?
何があったのでしょう?
推測されるのは、家庭内に相当なストレスがあったということです。
婿であったため、想像以上に肩身の狭い思いをしていたのかも知れません。
いい婿を演じるため無理を重ねていたのかもしれません。
その可能性は大いにあります。
さらに、他にも、何らかの悩みやストレスや欲求不満を溜めていたのでしょう。
そうでなければ、普通は家族から失踪し、暴行傷害、強姦を犯すようなことはないからです。
人間は、「演技する動物」です。
自分をどうにでも演じることのできる動物です。
周りの人は、それを全く見抜けなかったのでしょう。
完全にだまされていました。
それにしても、この男の子供たちは悲惨です。
父親がこのような性犯罪事件の当事者であったという十字架を背負い続けなければなりません。彼らの子孫も同じです。不幸なことです。
子供の育ちの行方も懸念されます。
どのように育つかと言うことです。
いずれにせよ、男性の女性に対する意識や行動には、母親が強く影を落としています。
母親に対する意識や感情が、女性観を形作っているということです。
女性に対する加虐は、母親に対する潜在的な仕打ち願望を投影しています。
母親に対する怒りや憎しみが沈殿しているということです。
少なくとも軽侮や怨恨の情念が潜んでいるということです。
女性に対する加虐は、母親への報復の意味を内在しています。
母親に真の愛情を抱いていれば、女性を玩ぶようなことは決してしません。
さらに、男性の女性に対する意識や行動には、父親の母親に対するそれらが色濃く反映しています。
女性に対する男性の意識や行動は、男の子と父親で近似し、連動すると言うことです。
父親、母親が真の愛情を持って育て、父親が母親に対し、真の愛情を持って接していれば、決して性犯罪を犯すような男性は育ちません。
この意味でも、親の責任は小さくありません。
自戒のための他山の石とすべきです。