自社株買い

自社株買いは、なぜ急増しているのか? 



自社株買いが、急増しています。
「自社株買い」とは、企業などが過去に発行した自社の株式を市場の時価で買い戻すことを指します。(→参照1参照2


自社株買いは、従来の商法では、主に次の理由で禁止されていました。
・企業の財産(資産)の減少につながるため、債権者にとってはマイナスになる。
・株価が操作される可能性がある。
この他、キャッシュフロー(現金の流れ)が減るなどのデメリットもあります。


しかし、1990年に始まったバブル崩壊後、株式の持ち合いを解消する動きが見られるようになりました。(→参照
業績の悪い会社の株式を保有し続けることがマイナス要因として作用するからです。
低迷していた株価対策の必要性もありました。
株式の会計基準が、取得原価方式から時価方式に変わったことも一因です。


自社株買いは、このような持ち合い株の解消などを背景に、法的にも次第に認められるようになりました。
自社株買いの自由度は拡大していきました。
その経緯をまとめると、次のようになります。


・1994年…株主総会決議による自社株買いが財源と目的を限定した形で認められる。
・1997年…ストックオプションに備えた自己株式の事前保有が認められる。
・2001年…目的を定めずに自社株を買い入れ、保有する金庫株が認められる。
・2003年…取締役会で自社株買いの時期や量を決定することが可能となる。


では、自社株買いは、最近なぜ勢いづいているのでしょう。
1つには、現在株価が割安であることです。
買いの好機であると考えているわけです。
確かに株価は、好景気が続いているにもかかわらず、踊り場状態にあり、時には大きく落ち込んでいます。


もちろん、それだけではありません。
この企業行動には、いくつかの大きな本来の目的があります。
その主要なものをまとめると次のようになります。


・発行済み株式数を減らすことにより、1株当たりの利益を増加させる。
・株式の購入により、株価の下落防止や上昇をはかる(株価対策)。
・株価の下落防止や上昇のためのアナウンス効果(宣伝効果)を与える。
・機動的に資本を減らすこと(資本消却,減資)により、財務戦略を柔軟にする。
・ストックオプションのための自社株を確保する。
※ストックオプションとは、経営者や社員が一定の価格で自社株を購入できる権利。
・株価を引き上げ、敵対的な株の買収をしにくくする。
・敵対的買収者へ株式が渡るのを防いだり、敵対的買収者の株式の保有率を下げる。
・不安定株主を減らし、株主の安定化を図り、敵対的買収者を排除する。
※下の3項目は、M&A(合併・買収)対策です。


このトレンド(動向、流れ)は、株価に割高感が出てくるまで続くかも知れません。
内外のファンドなどからのM&Aも増えています。(→参照
いわゆるハゲタカ(ハゲワシ)ファンドへの備えを進める必要は大いにあります。
企業が安定すれば、株主や経営者や従業員ばかりでなく、広く国民にとっても好ましいことは確かです。


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