●警官の平手打ちは、やむを得ないか?
警察官が迷惑行為を注意して口論になった高校生を平手打ちするという事件?が起きました。
新聞記事によると、経緯は次のようなものでした。(9月5日、毎日新聞)
一部を略しています。
「9月4日、午後10時50分ごろ、横浜市の路上で、神奈川県警大和署刑事課の巡査長、小磯慶洋容疑者(33)が県立高2年の男子生徒(16)が持っていた拳銃形のライターを取り上げて捨て、顔を数回平手打ちした。男子生徒は軽傷を負い、通行人の110番で駆けつけた県警署員が小磯容疑者を傷害容疑で現行犯逮捕した。
県警監察官室の調べでは、小磯容疑者は事件直前、男子生徒と同じ相模鉄道に乗車。男子生徒が回転式拳銃の形をしたライター(全長36センチ)を乗客に向けていたため、鶴ケ峰駅で下車後に「いたずらしてはだめだ」と注意したところ口論になった。小磯容疑者は大和市内で同僚と酒を飲んで1人で帰る途中だった。「いたずらをしていたので注意するつもりだった」と供述しているという」
確かに、車内や路上で、だらしないこと、身勝手なことをする少年少女は少なくありません。
もちろん、大人にもいます。
問題は、それが他人に不快感や恐怖感などを与えるような迷惑行為になることです。
実害があることもあります。
このような少年・少女に注意した場合、素直に自分の非を認め謝ったり、行為を控えたりしてくれることはそれほど多いわけではありません。
相手との力関係によります。
相手の方が力量があると判断すれば、それほど反抗的な態度をとりません。
ところが、大したことないと思えば、高圧的、威圧的な態度に出ます。
次のような罵声や暴言を吐いたり、脅迫的な罵声を浴びせることもあります。
「うぜーんだよー、向こうへ行け!」、「マジキモイ、チョーむかつく」、「文句あんのか、偉そうに言ってんじゃーねえよ!やる気か?」
相手の腕力が自分より劣弱と見れば、唾を吐き欠けたり、暴力的な行為(胸ぐらをつかんで頭突きしたり、殴る蹴るなど)に及ぶこともあります。
注意する大人などが引き下がれば、彼らは勝ち誇ったような気持ちになります。
彼らは、自分の迷惑行為、不良行為が罷り通れば、自信を持ちます。
彼らは、つけ上がり、いい気になり、傍若無人になる可能性が高いということです。
彼らの迷惑行為、不良行為は、許容したり、見過ごしていれば、たいていエスカレートしていきます。
犯罪者にまで、突き進んでいってしまうかも知れません。
もちろん、それは彼にとっても不幸です。
このような少年・少女たちに、自分の非を悟らせ、行動を改めさせるということは、大変必要なことです。
しかし、それを実現するのは至難です。
彼らがそのようなモラル、人間性の土台を育てられていないからです。
よほど力量があり、人間的な魅力のある人が心を込めて、尽力しなければ不可能でしょう。
そういう人は、滅多にいるものではありません。
運に左右されるでしょう。
仮に、この少年が車内で人に迷惑をかける行為を行い、それを注意されたのに憤り、反抗的な態度をとったことが真実であるとするなら、親の責任は免れません。
育てたのは、まさに親だからです。
「育てたように子は育つ」(相田みつを)のです。
このような迷惑行為や不良行為をする親の中には、程度の悪いチンピラ親がいることも少なくありません。
子供と同等、それ以上のこともあります。
さらに、今回のように子供が体罰的な対応を受けた場合、これに言い掛かりを付け、騒ぎ立て、金品を要求してくる親もいます。
名目は、暴力の慰謝料、損害賠償料です。
子供も自分も、攻撃を受けると、すぐに報復が用意されます。
少しでも相手に落ち度があるとすぐに、利得の獲得に結びつけられます。
社会にも、そういう風潮が蔓延しています。
大人の社会、親の社会にも、病理、腐敗はあるのです。
ただ、少年が逮捕された翌日、神奈川県警の西村昇監察官室長は、次のように会見で語りました。
「高校生は駅員らに注意を受けて素直に従っていた。巡査長はいきなり高校生の髪の毛をつかんで殴った」。
もし、これが事実とするなら、もちろん巡査長の非は免れません。
少年が、何度注意しても従わず、しかも反撃的な態度をとってきたというなら、巡査長にも酌量の余地はあるでしょう。
しかし、従順な少年に対していきなり、平手打ちでは、過剰反応と断じられてもやむを得ません。
巡査長は、飲酒をしていたといいます。
抑制が利かなかったのでしょうか?
正義感に駆られただけの行為ではないということになってしまいます。
それにしても、全長36センチもの拳銃の形をしたライターを乗客に向けていたとは、いたずらが過ぎます。
脅迫罪になってしまうかも知れません。
いずれにせよ、少年には、今回の騒動に学んで、自分の日々の行為を見つめ、人間として成長していくことを期待しています。
全ての原因は、少年の身勝手な迷惑行為に始まるからです。
一方、巡査長もまだ若年です。家族もいることでしょう。
今回の事件で彼が人生を暗転させるのは、大いに忍びないことです。
正義感を持ち続け、市民のために頑張って欲しいものです。