サブプライムローン

サブプライムローンと株価下落



先々週(07年8月上旬)のアメリカの株価急落を受け、世界の株価は大幅な下落を記録ました。
一週間あまりで、アメリカではNYダウが一時8%近くも下落し、日本でも日経平均が1割ほど急落しました。
世界的な株安のきっかけとされるのが、米国のサブプライムローンだと言われています。
サブプライムローンとは何でしょう?


このローンは、主に低所得者や、過去に返済に遅れたことのある人たちを対象とした住宅ローンです。
金利は、通常のローンより2~4%ほど高く設定されています。
全米の住宅ローン(残高は約1,100兆円)に占める割合は、14%ほどです。
つまり、サブプライムローン残高は150兆円ほどです。


しかし、ここ数年間に急増し、バブルと呼ばれた住宅購入ブームに拍車をかけました。
値上がりを続ける住宅を担保にして、大金を借りる人も増加しました。
消費は増え続け、企業の売上は伸び、景気を押し上げていきました。
企業業績の好調を受け、株価は右肩上がりを続けてきました。
この一年で、25%前後も上昇しました。
再び「根拠なき熱狂」の状態に近かったわけです。


しかし、右肩上がりがいつまでも続くわけはありません。
経済には、必ず波があります。ずっと好況を保ち続けるなどということはありえません。
必ず、停滞ないし低落が訪れます。


とりわけ、住宅ローンが不良債権化(焦げ付き=借金を返せない=貸出し金を取り戻せない)する恐れが増大しました。
そのため、債権者(貸し主)である銀行、証券会社、ヘッジファンド(投資会社)などが巨額の損失を抱える危険が出てきました。


そうなると、信用収縮が起こります。銀行などがお金を貸しにくくなります。
それどころか、不良債権が肥大すれば、最悪の場合、銀行などの金融機関に破綻の危機に陥ります。
もちろん、企業にとっては、お金の借り入れが難しくなります。一時資金の調達にも、困難が生じてきます。


企業活動が制約されれば、売上や収益が悪化します。
それを見越して(予測して)株価も下落します。
株価の下落で、企業は株による資金調達にも困難を来します。
このようなスパイラルによる不安の拡大から株の急落が発生しました。


では実際に、サブプライムローンは、どのくらいが不良債権化すると、想定されているのでしょう。
現在、延滞率は14%前後です。不良債権比率は、10%程度だと言われています。
先に述べたように、住宅ローン残高に占めるサブプライムローンの割合は、1割程度ですから、全体からすれば1%です。
大した数値ではないように思えます。
しかし、これは住宅ローン全体の不良債権比率を1%押し上げると言うことです。
この波及は、決して小さくありません。


このことを日本の場合で考えてみましょう。
日本では、国際基準行(海外営業拠点を有する銀行)は、自己資本比率を8%以上に保つことが必要です。
国内基準行(海外営業拠点を持たない銀行)は、その半分の4%とされています。
これは最低水準です。(→参照


自己資本(純資産)が4%である国内基準行が、もし不良債権を4%以上抱えたとなると、債務超過になる可能性があります。
そこで、不良債権が5%ある場合と3%の場合を想定し、それを数式化して比べてみましょう。次のようになります。


      資金の行先(借方)=資金の出所(貸方)   
  資産95%+不良債権5%=資本金(自己資本)4%+負債(他人資本)96%
            資産95%<負債(他人資本)96%
            →自己資本を投入しても間に合わない。
  資産98%+不良債権3%=資本金(自己資本)4%+負債(他人資本)96%
            資産98%>負債(他人資本)96%
            →自己資本は、2%残る。


銀行にとって、負債の大部分は預金です。債務超過は、その正常な払い戻しができなくなることを意味します。
日本は、バブル崩壊で破綻に直面した銀行に対し、不足部分に公的資金を投入して援助しました。


アメリカでは、どのような解決策が採られるでしょう。
日本への悪影響が持続することも懸念されます。
そうなると、企業業績が悪化し、給料などにも下げ圧力が働きかねません


今回の危機が、アメリカの人々が経済バブルに浮かれ、消費を貪った結果であるとしたら、誠に残念なことです。
日本のバブルの失敗は、アメリカでは何も顧みられなかったと言うことです。
人間の理性は、享楽を前にいかに弱いものか、今回の経済の動揺は示していると言えます。


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