最低保障年金私案

全ての国民に最低保障年金を!


先日の記事でも触れましたが、年金制度の根本的な改革が求められています。
骨子は、全ての国民に最低年金を保障し、財源を税に求めるということなどです。
それが、国民の安心と福祉に最も役立つからです。

また、現在分岐し、複雑化している全ての年金を一元化することも必要です。
それが、制度を簡明にし、無駄な人件費、事務・管理コストを圧縮するからです。
国民の理解と賛同も得やすくなります。

問題は、給付の対象者です。
全ての高齢者(例えば65歳以上)に満額給付を行えば、膨大な財源が必要です。
大幅な増税をしなければなりません。
従って、所得制限や、資産制限などを定めることは避けられないでしょう。

今日は、それを具体的にシミュレーション(模擬)してみましょう。
私は税の専門家ではないから、不備・不足はあると思います。
それを承知で、平凡な1国民としての希望を私案として提示してみたいと思います。

先の記事で示した給付基準のポイントは、次のようなものでした。
・年間所得200万円以下の場合は、全額給付とする。
・年間所得200万円を越える場合は、その2分の1を給付より減額する。
これに、次の資産制限を加えることにします。
・金融資産がある場合、2000万円を超える分につき、その0.01%を給付より減額する。

年間所得、200万円といっても、以下のような各種控除があるので、実際の収入は400万円以上になることが多いでしょう。
   給与所得控除、基礎控除、社会保険料控除、配偶者控除など

シミュレーションは、いくつかのケースに分けてみます。 
年金の給付計算は、個人単位とします。
次のようになります。

例1)年間所得200万円、金融資産2千万円の場合
    減額相当分0により、受給額は満額の100万円
例2)年間所得200万円、金融資産5千万円の場合
    減額分=(5000-2000)×0.01= 30万円
    →受給額は、100-30=70万円。
例3)年間所得300万円、金融資産2千万円の場合
    減額分=(300-200)×1/2=50万円
    →受給額は、100-50=50万円。
例4)年間所得300万円、金融資産5千万円の場合(単位:万円)
    減額分=(300-200)×1/2 +(5000-2000)×0.01
       = 50+30=80万円
    →受給額は、100-80=20万円。

年所得200万円以上を減額支給とし、年所得400万円以上を無支給とすることは、財源調達をかなり容易にするでしょう。
民主党のマニフェストでは、年収600万円以上が減額給付となり、無支給となるのは年収1200万円でした。
それでも、ほとんど大幅な増税をしないで財源は確保できると見積もりました。
上記の私案の支給条件となる年収は、それより大幅に低額です。
しかも、民主党案では触れられていない金融資産も受給条件に加えています。

ただ、民主党の年支給額が約80万円であるのに対し、私案では100万円です。
これらを勘案すると、税負担の増加はほぼ同等になると考えていいでしょう。

加えて、最低年金保障が導入されれば、年金受給年齢者の生活保護支給は全く不要になります。
生活保護費の財源分も圧縮できます。
財源確保には大きなプラスとして作用するでしょう。

私案で最も問題となるのは、保有金融資産についての把握です。
個人が現金、預金、有価証券(株など)をどれだけ保有しているかということです。
現在では、個人の金融資産を捕捉するのは不可能です。
どうしても、国民背番号制のようなものの導入が必要となります。
それが、制度の成否を分けるとも言えます。

また、固定資産(不動産など)についても、上限を設ける必要はあるかも知れません。
例えば、年収は200万円以下、金融資産は1千万円以下だけれども、時価1億円の不動産を所有するというような場合です。

ただ、高額所得者は、大反対をするでしょう。
資産を把握されることは、極めて都合が悪いからです。
たいてい巨額の隠し資産があるからです。

しかし、国民の大多数は、この制度があった方がはるかに利点が多くなります。
制度の恩恵を受ける人が大半だからです。
富裕層と中下位層の国民の駆け引き、綱引きになります。
制度が導入されるためには、何より国民・世論の強い後押しが欠かせません。

なお、この年金支給は個人単位に行われるため、夫婦とも年金受給年齢(通常65歳)に達している場合、満額受給では、100万円+100万円=200万円となります。
月額、17万円弱である。
「健康で文化的な最低限の生活」は満たせます。

年金の財源は、全て税金となります。
現在の税負担部分は、全体の3分の1です。
2009年には、2分の1に引き上げられます。
前回の記事で示したように、それを例えば、2014年に3分の2,2019年に全額のように引き上げていけばよいわけです。
決して不可能な道筋ではないでしょう。

今まで納められた保険料については、納入者に加算年金として、保障年金に上乗せすればよいわけです。
移行期の措置としてやむを得ません。
納入者に損が生じることはありません。

もし、国民年金基金(個人単位)や厚生年金基金(企業単位)のような自由加入の制度がそのまま継続して用意できれば、そこが引き継ぐこともできます。
最良に近い方法となるでしょう。

もちろん以上の試案は私見です。私の最も望ましいと考える案です。
しかし、多くの国民は拙案に近い希望を抱いているのではないでしょうか?

具体的な数値は、政治家が決めることです。
どのように決着するでしょうか?
希望と興味を持って見守りたいと思います。