低所得者の税負担

貧しい人は、本当に税負担が軽いか?


貧しい人々(所得の低い人々)は、あたかも税を負担していないかのような議論がしばしば行われます。税を負担していないのに、公的なサービスを受けてずるいというニュアンスが込められています。
しかし、本当にそうでしょうか?

例えば、子供2人を育てる夫婦の場合、年収の所得課税最低限度額は、およそ300万円です。所得から、次のような控除(費用と見なされ、差し引かれる部分)があるからです。
 基礎控除(38万円)、給与所得控除(110万円)、配偶者控除(38万円)、
 扶養控除(38万円×2)、社会保険料控除(32万円)など

では、これに対して税金はどうでしょう?具体的な計算をするため、支出については次のような仮定をおきます。
 ・年間の消費支出を250万円とする。
 ・自動車のガソリン代を年5万円、お酒代を年間5万円とする。

この場合、税金の負担はどうなるでしょう?次のように概算されます。
 消費税(5%)…12.5万円、
 ガソリンの税金(約54%として計算)…2.7万円
  お酒の税金(約30%として計算)…1.5万円        合計 16.7万円 

税金には、この他にもいろいろありますが、特に、持ち家であれば、固定資産税がかかってきます。
この算出方法は非常に複雑で、また自治体によって多少異なるのですが、大まかにいって不動産売買時価の0.5%程度も見積もれば十分でしょう。(本来は、課税標準額を基準とする)
つまり、時価3000万円の住宅の年税額は、15万円程度となります。
これを加算すると、税金の総額は32万円程度となります。

ここには、年金保険料や国民健康保険税は加えられていません。
年金保険料は、平均月収25万円の場合、およそ21万円です。
国民健康保険税(料)は、自治体の財政事情によって異なりますが、上記の家族の場合、平均的には20万円前後です。

以上の公的負担を合算するとどうなるでしょう?
32万円+21万円+20万円で、総額74万円となります。
所得の25%ほどになります。決して、軽微な負担どころではありません。

これに対し、この4人家族の正味の消費支出は、年225万円程度となります。
余裕はありません。楽な生活ではありません。

しかし、このような人たちも、25%前後の公的負担をしながら、一生懸命、日々の生産活動やサービス行に携わって社会を支えています。
彼らに冷たい目が向けられて良い理由は何もありません。