国会大波乱


参議院選挙と政局
 


法案成立はどうなる?



国会は、大波乱が予想されます。
国会は法律を作り、定めるところです。それが、大いにもめるということです。
参議院選挙で民主党が大勝し、過半数を制したからです。


今までは衆参両院とも、与党が過半数を占めていました。(議席数は、衆議院480,参議院242)
とりわけ、衆議院では与党は3分の2以上の議席を得ていました。
これは、与党は提出する全ての法案を成立させると言うことが可能だということです。
野党を全く無視できる、思う通りに法案を成立させることができるということです。
いざとなれば強行採決ができるということを意味します。
事実いくつかの法案がそのようにして成立してきました。


ところが、今や状況は大きく変わりました。
もちろん、与党が衆議院で3分の2以上を占めていることに変わりはないので、強行採決しようと思えばできないことはありません。
しかし、国民はそれに対し疑問を抱き、不安や反感を募らせるでしょう。
国民の気持ちや意志を無視することはできません。


そのようなことを続ければ、次の衆議院選挙(=総選挙)に大敗する可能性が出てきます。
そうなれば、ついに民主党を中心とする野党に政権を渡すということになります。
内閣も、総理大臣も、実質的に衆議院から生まれるからです。
権力を手放さなければなりません。
自分たちの作ろうとしていた法律、望んでいた法律を成立させることは至難になります。


法律は、国家社会に属する誰もが守らなければならないルールです。
これに違反した場合は犯罪となります。処罰もされます。
この法律を作り定めるのが国家権力であり、国会です。
憲法では、「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である」(41条)と定めています。
だから、国家議員は国の最高権力を担う巨大な責任を負っているのです。


独裁者が権力を握った場合は、この法律を自分の好きなように作ることも可能です。
かつての殿様、王様がそうでした。
「王は、ハレム(後宮、大奥)を設けることができる」という法も、「武士は、切り捨てごめんをしてよい」という決まりも、「~家の血筋のものだけが、要職に付くことができる」という命令も定めることができるわけです。
自分に一番都合のよいように自由に法律を作り、変えていくことが可能なわけです。


現在でも、独裁者はしばしばこれに似たようなことを行っています。
自分を終身大統領とするという法律を定めてしまう大統領もいます。
軍事力を自分の私兵にしてしまうようなことも可能なわけです。
事実、多くの大統領は、戦争を始める権限を専有しています。


このような独裁権力は、幸い日本では成立していません。
ただし、会社などの組織や、それぞれの家庭の中には、しばしば存在しています。
独裁権力者は、その中で自分の都合のよいように決まり、掟を定め、強引な支配を行います。
スポーツ競技の際にしばしば言われる「審判がルールブックである」というのとよく似ています。
自分の言ったこと、決めたことがルール、法であるということです。


国の法律については、国会という国民の代表者で組織される民主的な機関で決められています。
日本では、衆参の2つの議院で審議と議決がなされ、決められてきました。
この2つの議院の過半数以上を自民党と中心とする与党が占めてきました。
だから、自分たちの提出する法案を成立させることが容易でした。


しかし、今回の選挙(通常選挙)で参院は、野党が過半数を占めるようになりました。
これは法案の成立が、難しくなることを意味します。
多くの法律案について、衆参両院で意見が対立し、議決が分かれるでしょう。


では、法案の行方、運命はどうなるでしょう?
法案の成立過程は、なかなか分かりにくいものです。
衆参両院で議決が割れる場合は、特にそうです。
そこで、法案議決のプロセスをできるだけ分かりやすく述べてみたいと思います。
合わせて、民主党など野党の出方、対応の仕方を推し量ってみたいと思います。


議決のプロセスを図示してみましょう。次のようになります。
衆議院が先議(先に議決)する場合です。
ABCDは、参議院での法案処理の結果です。
○印は成立した場合、×印は不成立の場合です。
※一部のブラウザ(Webページを閲覧するためのソフト)では乱れが生じるかも知れません。


  A.可決→○
  B.修正→衆院が同意 →○
       \衆院が不同意 \    /衆院再可決(2/3以上)→○
  C.否決            |→|  両院協議会→E
  D.期限切れ(60日超)  /    \上の2つの場合以外→× 


  E. 両院協議会→成案成立→両院で可決(各院1/2以上)→○
           |      | 衆院否決→×  
              |         \参院否決\/衆院再可決(2/3以上)→○
               \成案不成立         /\衆院否決  (2/3未満)→×
   ※両院協議会で成立した成案は、通常両院でも可決します。
    従って、色の薄い文字部分に進むことは考えにくいでしょう。

参議院が先議の場合も、基本的な流れは同じです。
ただし、次の点が大きく異なります。
衆議院で否決された場合(上記C)は、即不成立(廃案)となります。
また、期限切れの規定(上記D)はありません。


予算、条約、内閣総理大臣の指名については比較的分かりやすいので、ここでは省きます。
こちらを参照してください(→参照1参照2)。
これらについては、衆参で議決の結果が分かれたときなどは、衆院の議決が成立するということです(衆議院の優越)。


参議院で、修正、否決、期限切れ(上記、B、C、Dの場合)となった法案が、衆議院で再可決された例は、1954年以降ありません。
ただ現在、与党はいまだ衆院の3分の2以上を占めます。
参院で否決などされても、再可決は十分可能ではあります。
与党は、どのような対応をするでしょう?


一方、野党は、与党案に賛成できない場合、衆院の同意を得られる修正案を提出するか、両院協議会を開いて成案の成立を目指すことが推測されます。
そうでなければ、否決を貫き、与党案の成立を阻むでしょう。


いずれにしろ、法案の議決を巡る与野党の攻防は、興味深いものになりそうです。
テロ特措法、最低賃金法改正案、迷惑メール防止法など、重要法案や生活に密接に関連する法案も目白押しです。(→参照
それらがどのような運命をたどるか、よく見守っていきたいと思います。


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