▲世界の人々の生活を脅かすモンスターマネー
前回、投機マネーが商品市場に触手を伸ばしていることについて述べました。
そのための価格上昇が、急速に深刻な影響を与えはじめています。
店頭の商品の値上げが、次々と続いているということです。
それは、貧しい人ばかりではなく、決して生活に余裕のない多くの人々の家計を直撃し、脅かしています。
この世界のモンスターマネーの商品市場への大移動の最も恐ろしいのは、それが人々の日常生活に直結した必需品を対象としているということばかりではありません。
その商品市場が、メタボマネーを受け入れるにはあまりにも狭小、脆弱であると言うことです。
主要な商品価格が、わずか1年ほどで2倍に暴騰したという事実がこれを証しています。
初回の記事でまとめたように、株式市場(時価総額)と比べれば恐らく10分の1程度です。
デリバティブ(金融派生商品)と比較するに及んでは70分の1程度と推測されます。
つまり、株式市場の資金の10分の1,デリバティブ市場の資金の70分の1が、商品市場にくかえば、論理上は全ての商品を買い占めることができるということです。
もう少し、具体的に例を挙げて比較してみましょう。
小麦、および穀物全体に目を向けてみます。
これらの市場価格、生産量は、次のようになっています。
小麦1ブッシェル(≒36リットル≒27kg)≒10ドル、1トン≒4万円。
小麦の世界全体の生産量≒6億トン≒24兆円。
全穀物の世界全体の生産量≒20億トン≒80兆円。
つまり、小麦は24兆円で、穀物全体は80兆円で掌握できるということです。
もちろん、理論上です。
しかし、意味のない数字ではありません。
この小麦の総額を代表的な市場規模と比較してみると、次のようになります。
株式市場の300分の1、1日の為替取引の15分の1、
デリバティブ残高の2100分の1
穀物全体の場合でも、次のようになります。
株式市場の90分の1、1日の為替取引の48分の1、
デリバティブ残高の620分の1
最も大事な食品の市場規模は、恐ろしいほど零細です。
背後にそそり立つモンスターマネーを想像すると寒気がします。
しかも、悪いことに食糧に対する需要は今後、激増することが確実です。
世界の人口が今後、急増するからです。
50年後には、今の5割り増しの100億人前後に達すると推計されています。
もし、モンスターマネーが小麦相場、穀物相場に雪崩れ込み、席巻するとなると、これらの価格はどうなるでしょう?
もちろん、大暴騰です。
食品ばかりではありません。
モンスターマネーの支配・蹂躙は、あらゆる消費物資、生活物資、そして資源におよぶ可能性が大です。
そうなると、極度の悪性インフレ、深刻なスタグフレーション(不況下の物価高)の進行です。
狂乱物価が続くということです。世界中でです。
多くの人々が窮地に追い込まれるでしょう。
貧しい人々の中には、餓死者が激増するかも知れません。
普通の人々も、生活の困窮を余儀なくされるでしょう。
社会的な大混乱が起こるかも知れません。
大暴動や戦乱さえ懸念されます。
終末的なカタストロフィ(大破滅、大崩壊)さえ予見されます。
世界の指導者たちは、その前に、事態を深刻に捉え、知恵を絞って解決の道を探って欲しいと思います。
たとえば、次のような方策は早急に検討すべきです。
・レバレッジ取引や証拠金取引などには一定の制約を設ける。
・超低金利や量的金融緩和などによる過剰なマネーサプライを避ける。
・潤沢な資金は、インドやアフリカなどの低開発国の援助、投資に誘導する。
いずれにせよ、大量の資金を握る人々が目先の利に追われていては、必ずいつか、人類は大きな代償を払わなくてはならないでしょう。
欲望が知識や知恵を凌駕することは、高度な金融工学がバブルとその崩壊をもたらしたことで立証済みです。
政治的な指導者ばかりでなく、経済界、経済学界の指導者にも見識と努力は求められています。
世界の人々の未来は、モンスターマネーに対する彼らの意識や対処の姿勢にかかっているといってよいでしょう。
責任は、極めて重大だと言えます。