株価の下落要因

株価下落の原因を考える


株価が大きく値を下げ続けています。
とりわけ日本の株価の下落は深刻です。
ときおり、急落、暴落も重ねています。

世界的にも、ほとんど一人負けといった状態です。
主要国の2007年度の株価の騰落率は、次のようになっています。(概数)
格付け会社・スタンダード・アンド・プアーズによるものです。(→参照
 インド+79% ブラジル+75% 中国+67% ドイツ+31% ロシア+22%
 フランス+10% アメリカ+4% イギリス+4% イタリア+2% 日本-7% 
 世界+10% 新興国平均+39%

同社が発表した2007年の世界52カ国の主要株価の年間騰落率をみても、日本の2007年の下落率は世界52カ国中51位です。
しかも、下落したのは52カ国中、わずか5カ国です。

ただ、今年はサブプライムの問題が後を引き、また、北京オリンピックも終了することから、世界的なレセッション(景気後退)も懸念されます。
株価前面安の展開が待ちかまえているかも知れません。

日本における株価のここ数ヶ月ほどの急落原因の中心は、サブプライムの問題にありました。
アメリカ発の世界的な信用不安、金融危機です。
投資マインド(心理)に大きく冷やしています。
さらに日本は、為替の問題も、ナイーブ(センシティブ)な作用を及ぼしています。
とりわけ円高が輸出産業に不安材料を与えています。

もちろん、通常の場合、株価下落には、これ以外にも様々な下落要因が絡みます。
多くの要因が複雑に、重層的に交錯しています。
単純ではありません。

そこで、今回は、この株価の下落要因について触れてみることにしました。
一般的なマイナス要因です。
その主要なものをまとめて列挙してみます。
2つに大別しました。次のようになります。

マクロ的要因(国や地域などの全体的要因)
・国内経済の悪化…不況、景気後退。
・主要国の経済の悪化…主要国の不況、景気後退。
・経済指標の悪化…景気動向指数、先行指数など。 
・金利上昇…金利負担が重くなる。
・金融引き締め…政策金利(公定歩合など)の引き上げ。資金の供給量を削減。
・金融緩和の解除…ゼロ金利政策の解除。量的緩和政策の解除。
  ※金融緩和の解除は、金融引き締め政策の一環として位置づけられる。
・金融不安…信用収縮(貸出の削減、貸し渋りなど)。
・緊縮財政…歳出削減、公共事業の削減など。
・経済政策への不信、低評価…経済への悪影響を懸念。 
・世界の主要取引市場の株価下落・暴落…危機連鎖の可能性。
・為替変動…円高は輸出関連産業へ悪影響、円安は輸入関連産業へ悪影響。
・輸入品の高騰…原油などのエネルギー資源、小麦、大豆など。円安と同じ効果。
・資金の逃避…外人投資家の資金引き上げ、投資対象の移動(株から商品など)。
・循環的要因…持続的上昇への反動。景気の山からの転換。バブル状態からの反転。 
・アナウンスメント効果…マスコミやエコノミスト、政府などの言説、論調。

ミクロ的要因(各企業などの個別的要因)
・企業業績の悪化…売上高、売上利益、営業利益、経常利益、当期純利益など。
  ※しばしば、次のような指標が判断材料になります。
  PBR(株価純資産倍率)、PER(株価収益率)、ROE(株主資本利益率)など。
・不祥事の発覚…談合,不正経理(粉飾決算など),製品トラブル(欠陥商品など)、
   製品リコール、インサイダー取引、偽装表示など。
  ※リコール…欠陥のある製品を生産者が回収し、無料で修理すること。
・アナウンスメント効果…マスコミの報道、風評。

もちろん、株価は上昇するときもあります。
急騰することも、暴騰することもあります。
日本でも、バブル期に既に経験済みです。

その要因については、上でまとめた下落要因の逆を考えればよいでしょう。
たいていの場合、当てはまります。

株価の変動が、問題となるのは、それが大きく、急激に動揺すると言うことです。
実態を大きく乖離して迷走する場合があります。
ここにも原因はあります。
その主因を並べてみましょう。
次のようになります。

株価変動の加速要因
・心理的動揺…疑心暗鬼、狼狽、群衆心理。
  ※個別の心理が集合して、シナジー(相乗効果)をもたらす。
・レバレッジ…「てこの原理」の応用。
 少額の資金を担保(保証金)に何倍ものお金を運用。
 実物の売買を伴わない架空取引。自己資金の数十倍もの取引が可能。(→参照
・信用取引…株式や株式購入資金を証券会社より借り入れて株の売買を行う。
 実物の売買を伴わない架空取引。空売り(信用売り)・空買い(信用買い)。
 資金の数倍以上の取引が可能。

もし株価が、経済の実態に即した動きをするのであれば、それほど問題のある影響を経済や社会に及ぼすことはありません。
経済や社会を大きく攪乱することはありません。
人々の生活を窮地に追い込むこともありません。

しかし、信用取引が加わり、レバレッジが介在することにより、いつしか、実態と大きくかけ離れていきます。
これに、資金(流動性)のだぶつきが燃料となって変動に拍車をかけます。
投資家の心理にも、レバレッジが作用します。

それゆえに、株取引はしばしばマネーゲーム、マネーギャンブルと称されます。
経済評論家・内橋克人氏は、これを「一喜一憂資本主義」という言葉で的確に表現しています。

人間が自ら作り出した危機が迫っています。
肥大した欲望の生み出したシステムのほころびです。
人間は、それほど謙虚でも、賢明でもないということです。