防衛省スキャンダル

兵器水増しの付けは国民へ!


今、防衛省スキャンダルが国会を大きく揺るがしています。
守屋武昌前事務次官(63)と軍需専門商社「山田洋行」の元専務の宮崎元伸容疑者(69)の癒着に始まる贈収賄、便宜供与の問題です。

懸案の年金問題やテロ特措法さえ、影を薄くしてしまっているかのようです。
政治問題、政治課題の焦点は、分断され、分散しています。
マスコミには、いろいろな情報がたくさん飛び交っています。
世上をにぎわしています。

マスコミから日々溢れる情報は、どうしても断片的になり勝ちです。
なかなか、まとまりが得られず、スッキリしません。
そこで、事件の骨格をつかむべく、これらの情報を整理してみることにします。
あわせて問題の本質を探るコメントも加えてみます。

まず、守屋氏が「山田洋行」の元専務で、の宮崎容疑者山田洋行の受けた利益供与についてです。
次のようになります。
※「日本ミライズ」は、「山田洋行」の元専務で、「日本ミライズ」の前社長である宮崎元伸氏=業務上横領容疑などで逮捕=が分離、設立した会社。
(ちなみに、「洋行」とは、中国語で貿易商の意味。)

1.守屋氏が宮崎元専務などから受けた利益供与・300回以上のゴルフ接待。総額1500万円以上に相当。
・費用丸抱えのゴルフ旅行を繰り返した。
・高級クラブなどでの飲食接待を受けた。
・「還暦祝い」名目に、現金20万円の贈与を受納。
・守屋氏が部下や友人らと個人的に飲食した代金を山田洋行が負担した。
・守屋氏の妻が、防衛省幹部の妻らでつくる婦人会メンバーと高級クラブやフランス料
 理店などで飲食した代金を山田洋行が負担した。
・守屋氏の二女が米国の大学に留学した際、山田洋行の現地法人役員が大学側に
 口添えした。また、宮崎容疑者の指示で社員が大学まで案内したり、日用品購入を
 手伝った。
※守屋氏は、10月29日の衆院テロ防止特別委員会の証人喚問で、毎回1万円を支
 払ったとしたが、山田洋行の米津佳彦社長(60)は、「経理データを調べたが、入金
 処理は一切されていなかった」と語った。
※守屋氏は、宮崎元専務と、自衛隊員倫理規程に違反する賭けマージャンを繰り返し
 行ったことも判明。

宮崎氏を中心とする山田洋行、日本ミライズが行っていた贈賄工作は、政治家にも及びます。
マスコミによって報じられた供与の内容は次のようになります。

2.利益供与を受けていた政治家とその内容・小沢一郎・民主党代表…自身が総支部長の党総支部や資金管理団体に対する総額
 600万円の寄付を受納。
・上田清司・埼玉県知事…衆院議員時代、50万円の寄付を受納。
・額賀福志郎・財務相…防衛庁長官在任中に220万円のパーティー券収入。
 宮崎容疑者とゴルフ。
 宮崎容疑者と守屋氏の会食の場に同席した疑惑。
 山田洋行社長の親族の結婚式(05年)の際、約20万円の車代を受納。
・久間章生・元防衛相…10万円のパーティー券収入。
 宮崎容疑者と守屋氏の会食の場に同席した疑惑。
 山田正志社長の親族の結婚式(05年)の際、十数万円の車代を受納。
・玉沢徳一郎・衆院議員…防衛庁長官在任中に30万円のパーティー券収入。
・野呂田芳成・衆院議員…防衛庁長官在任中に20万円のパーティー券収入。
・森清・元衆院議員(元防衛政務次官)…「日本ミライズ」の取締役に就任。
・東祥三・元衆院議員…山田洋行の顧問として就任。
 年間800万円前後の顧問料の他、52万円の献金を受納。
・田村秀昭・元参院議員(旧防衛庁OB)…計300万円のパーティー券などの収入。
・藤島正之・元衆院議員(旧防衛庁OB)…40万円のパーティ券収入。
・村上誠一郎・衆院議員…60万円のパーティ券収入。
・下地幹郎・衆院議員…40万円のパーティ券収入。
・柳本卓治・衆院議員…30万円のパーティ券収入。
・岸信夫・参院議員…20万円のパーティー券収入。
・麻生太郎・前自民党幹事長…20万円の献金を受納。

この他に、多くの政治家が、山田洋行側から20万円以下のパーティーの購入を繰り返し受けていたようです。
しかし、1回当たり20万円以下のパーティー券収入や献金などは、政治資金収支報告書への記載が義務づけられていません。
ほとんど記載から外されていました。

パーティー券や献金に関しては、制度を熟知した山田洋行と議員側が、意図的に金額を20万円以下におさえ、購入を繰り返していたケースが多いとみられています。
山田洋行が、制度の抜け穴も使って、幅広く政界工作をしていた実態が浮かび上がっています。

一方、宮崎容疑者は、山田洋行に天下った防衛庁OBに、防衛庁の重要資料を入手させていました。
主なものは、次の通りです。
 ・調達が予定されている高額の防衛装備品のリスト。
 ・防衛庁の主要ポストの人事異動の予定表、職員の住所録。
これらをもとに、重要ポストに就きそうな人物の目星をつけ、長期間にわたり、歳暮を贈ったり、接待攻勢を行ったとされています。

この贈賄工作は、防衛省内部の職員にも及んでいました。
その概要は、次のようになります。

3.防衛省内職員への利益供与・最低でも1万円の贈答品を贈った。高級牛肉やカニ、新巻きザケなど。
※山田洋行の元幹部によると、「ランクごとに万円単位で上がっていった。総額で、
  数百万円から1000万円程度」に上る。
・多数の防衛省職員を山田洋行へ天下りさせた。
※多い時には、十数人の再就職を受け入れていた。
  その多さは、軍事専門家の間でも疑問視されてきた。

なお、守屋氏も1997年、「山林を売って余った2千数百万円」など、4500万円を投資資金として前防衛政策課長(47)に個人貸ししていました。
守屋氏は、その一方で、同年、東京都新宿区の自宅を購入のため、3500万円の融資を受けていたことが明らかになっています。

では、このような利益供与に対し、山田洋行や日本ミライズはどのような不当な利得を得てきたのでしょう。
不正な操作が行われ、それが見逃されてきたのでしょう。
それは、水増し請求に典型的に現れています。
次のようになります。

4.水増し請求・防衛庁(当時)は05年、「山田洋行」の子会社である「日本ユ・アイ・シ」が輸入した生
 物偵察車4台を、予算額より3億3000万円高い、計約15億6000万円で契約、購
 入した。
・防衛庁(当時)は00年、対空ミサイル防御装置を8億1000万円で山田洋行と契約し
 たが、そのうち、約1億8千万円が過大請求だった。
・山田洋行は、海上自衛隊の航空機用装備品2件の輸入でメーカーの見積書を改ざ
 んし、890万円を水増し請求した。
※山田洋行側がメーカーの見積書を改ざんして、同庁に提出したとみられている。
  水増し率は、およそ20~60%に上るとされている。
※山田洋行の米津佳彦社長は、2件の水増しを認めるとともに、「過去の契約のかなり
 の部分について水増し請求した」と語った。
※山田洋行が受注した過去5年間の契約件数は、約670件とされる。

なお、次期輸送機CXのエンジンを巡っては、守屋氏が今年6月ごろ「なぜ随意契約じゃだめなのか」と部下に発言しています。
製造元との直接契約を検討する省内の動きには強く反対していました。
「日本ミライズ」に有利な言動をしていたことが判明しています。
「日本ミライズ」が代理店になるように取り計らったということです。

次期輸送機CXは、今後最大40機ほどを調達する予定で、付属部品を含めたエンジンの納入総額は、約1000億円に上るとされています。

以上が論点の整理です。
いかに政官と業界の癒着が度を超しているかお分かりになったと思います。
とりわけ利益供与は、常習的で多大です。
もちろん、これだけの利益供与がありながら、何の便宜も図らなかったと考えるのは、不自然で無理があります。

元幹部は、宮崎容疑者の手法について、「この人が『使える』と思ったら、徹底的に攻める。守屋さんに対してもそうだが、いつもそういうやり方だった」と話しています。
交際が長期に渡っていることから、守屋氏を利用するための投資を早い段階から行っていたということです。
守屋氏がそれに対し、山田洋行側に大きな配慮を与えるようになるのは理の当然です。

守屋氏は、長い間、防衛庁・防衛省の幹部であり、トップとして4年間も君臨してきました。
権勢を誇り、「天皇」とまで称されてきた人物です。
彼が組織の内部に直接の圧力、働きかけを行わなかったとしても、内部の人間は、守屋氏の意向を十分汲み取っていたはずです。
無言の圧力です。
親分と忠実な子分の関係です。

発注、契約の多くが、業者による競争入札でなく、随意契約(特定の相手を指名)であったことは、癒着と贈収賄の構図をさらに深めました。
ここに、守屋氏の恣意や配下の職員の配慮が入り込む余地は十分です。
さらに、山田洋行側から利益供与を受けた政治家たちの直接的、間接的な圧力もあったでしょう。

水増し請求は、山田洋行側に多大な利益を与え、国民に同額の不利益を与えました。
判明しているだけで、数億円に上っています。
もちろん、これは氷山の一角に過ぎないはずです。

毎年の水増し額は、数億円あったとも言われています。
水増し率は、20~60%にも上るともされています。
実際の、不当利得は巨額に上るでしょう。
会社が急成長するわけです。

さらに、今後導入が予定されている次期輸送機CXの受注額は、1000億円です。
この数十%の水増し率から類推すると、水増し額は数百億円にもなります。
その巨利も懐に入る可能性がありました。

米軍の在沖縄海兵隊のグアム移転についても、大きな疑惑が沸き上がっています。
このグアム基地に、日本側は3500戸の米軍住宅を建設予定です。
日本側の試算では、この建築価格が、一戸当たり、73万ドル、日本円で8000万円にも及んでいます。
しかも、これは土地代無しの住宅(建物)だけの価格です。

米側の試算では17万ドル程度(約1900万円)でした。
日本側は、米側の4倍以上の見積価格を出したわけです。
差額は、6千万円以上にもなります。
総額は何と、3500戸×6000万円=2100億円です。
なぜでしょう?ここに大きな疑問がもたれています。

見積もり通りに実施されれば、日本は、住宅建築だけで実に2100億円も多く支払わされることになります。
これは日本国民が負担することになります。

しかも、山田洋行は、このグアムの土地に購入の計画があったということです。
事前に土地を買い占めておけば、膨大な利益が転がり込んできます。

今回偶然に摘発に至ったのは、軍需商社、山田洋行の受注に関する案件でした。
何より懸念されるのは、このような水増し請求が、防衛省ばかりでなく、各省庁、全ての省庁にまで至っていないかと言うことです。
関係する業者は無数です。

国家予算(一般会計)は、83兆円(2007年度)にも上ります。
仮に、この1割が水増し請求などで無駄に支出されていると、年間の税金の浪費額は、8兆円以上にもなります。

そればかりではありません。
国家予算(一般会計)とは別口の特別会計があります。
その総額は、年間175兆円(2007年度)にもなります。
両者の歳出を合わせれば、260兆円ほどです。
この1割が水増しや流用などで無駄に支出されているとすれば、国全体では26兆円近い税金が毎年散在、空費されていることになります。
消費税に換算すれば、およそ10%です。
もちろん、ここには地方自治体の分は含まれていません。

この税金の不当支出、無駄使いが抑えられれば、消費税は全く不要だし、上げる必要もないということです。
消費税に頼らず、社会保障や行政サービスを充実させることができるということです。

このように巨額の国民の金、税金の使い道を政府に任せている限り、国民はそれを注意深く凝視していく必要があります。
とりわけ、業者と政官との癒着には、十分警戒し、用心をしていく必要があります。

怠ってはなりません。
それは、何より自分たちの税金が無駄に使われないためです。
甘く見られたり、騙されたりしないためです。