サブプライム問題と日本のバブル

サブプライムとバブルにおける不良債権の比較



サブプライム問題が経済、金融に深刻な影響を与えています。
株価は大きく下落し、景気への悪影響が懸念されています。


17年ほど前、日本でも同じようなことが起こりました。
バブル崩壊です。
今回と同じように不良(返済不能)債権の肥大が根幹の原因でした。
その後、日本は失われた10年という経済的な困難、苦境が続きました。


株価(日経平均)は、依然として1989年末の4万円近い値から4割ほどに留まったままです。
不動産も、大きく下落したまま、ごく一部を除き、低迷を続けています。(→参照
多くが絶頂期の半値以下になっています。


サブプライムの不良債権による混乱も、日本のバブルのように経済に深刻な病理を与え続けるでしょうか?
世界的な波及が避けられない状況となっています。
超大国アメリカ発で、しかも債権の証券化という新しい金融メカニズム、システムによって、病根が世界中に拡散、浸潤しています。


そこで、サブプライムの不良債権の大きさ(金額)を、バブルのそれと比較してみることにしましょう。
もちろん、単純な比較はできません。
前述したように、両者の背景にある金融メカニズムやシステム、債権形態が大きく異なるからです。
とくに、バブルでは融資対象、投資対象が、土地や株式でしたが、サブプライムの場合は住宅やその貸出債権を証券化した金融商品です。


しかし、根本原因が加熱した過剰な貸出、投資にあることに代わりはありません。
数値の比較は、問題の真相に迫る一定の手立てとはなるでしょう。
違いは、次のようになります。
なお、不良債権の意味と種類については、こちらをご参照下さい。→不良債権とは

日本・バブルの場合(→参照1、参照2参照3
 ・不良債権比率(推定)…約6~7%
 ・不良債権残高…約13兆円(1992年)、約35兆円(2002年)
 ・不良債権処分損の額…約1.6兆円(1992年)、約6.7兆円(2002年)
 ※93年5月には、日銀は銀行の不良債権を約50兆円に達すると予測。
 ※1992~2002年の不良債権処分損の累計額は、約90兆円。
 ※不良債権処理額より不良債権発生額の方が大きいと不良債権残高は増大します。


アメリカ・サブプライムローンの場合
 ・不良債権比率…約14%
 ※住宅ローン全体における不良債権比率…約5%
 ・不良債権残高…約22兆円(2007年)
 ・回収不能(貸し倒れ、焦げ付き)額(推定)…約13兆円(2007年)
 ※サブプライムローン残高…約1兆3千億ドル(150兆円)
  住宅ローン残高…10兆ドル(1150兆円)強
  
OECD(経済協力開発機構)は、サブプライムローンによる金融市場の混乱に伴う損失が3千億ドル(約33兆円)に達する可能性があるとの資産を公表しました。
これは、ほぼ最終的な回収不能総額と考えてよいでしょう。
上記のように、日本のバブルでは、崩壊後の10年間の不良債権処分損の累計額は、約90兆円でした。
要するに、回収不能(貸し倒れ)となった不良債権の処分額です。


この金額に比べると、サブプライムローンによる損失額は小さいように思えます。
しかし、日本の場合、不良債権はほぼ自国内に留まっていましたが、サブプライムローンの不良債権は世界中に拡散しています。
しかも、他の金融商品(証券など)の中に組み込まれ、紛れ込んで、実態がつかみにくくなっています。
取引関係者は皆、疑心暗鬼になっています。


サブプライムローン債権の組み込まれた金融商品は、その商品全体がその価値、価格を暴落させています。
まるで、ごく一部が腐ったリンゴが、全くの売れものにならなくなったのとよく似ています。
波及効果、影響力が大きいわけです。
バブルの場合と、単純に比較できない所以です。
いずれにせよ、世界経済に大きな暗雲を投げかけているのは否定しようがないでしょう。


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