▲国債が膨張し続けると,最後はどうなる?
現在,国の借金である国債の残高は,およそ680兆円あります(18年度末現在)。
1人当たりにすると,500万円ほどです。4人家族なら2000万円になります。膨大な金額です。
しかも,国債残高はいまだに膨張し続けています。
国の借金だから国が潰れない限り大丈夫だろう,と安心している人もいます。本当にそうでしょうか?
そこで,国債がこのまま増え続けた場合,将来どのようなことになるのでしょう?
その主なシナリオをいくつか述べてみましょう。次のようになります。
1.ハイパーインフレ(極度の物価高)が起こる
これは,借金である国債を償還(債務を返済)するために,やむなく日銀券(紙幣)を大量に発行することによって引き起こされます。
お金が大量に出回ると,物価はどんどん高くなっていきます。
人々がたくさんのお金を持つからです(市中における過剰流動性)。
ハイパーインフレは,戦争が終わった直後,しばしば引き起こされてきました。
国家が戦争の費用を調達するため,大量の紙幣を発行していたからです。
戦争が終わると,行き場を失ったお金は物資の購入に向かいました。
しかし,戦争で生活物資は大きく不足していました。
そのため,物価の大暴騰が起こりました。
物価は,時には数万倍にもなり,従来の紙幣はどんどん紙切れとなっていきました。
日本では,戦後昭和20年から24年の4年間で,消費者物価はおよそ80倍になったという研究結果(「戦後日本のインフレーション」原薫著)があります。
平均的には,年に3倍です。
再び戦争でも起こらない限り,こんなにひどいことにはならないでしょうが,政府が紙幣の発行を増やし,極度のインフレが起こる恐れは全く無いわけではありません。
政府にとっては,それにより国債の実質価値を下げ,残高も減らすことになりますが,国民にとっては,物価高騰による家計逼迫という大きな不利益を負わなければなりません。
2.国がデフォルト(債務不履行)を行う
窮地に追い込まれれば,国がデフォルト(債務不履行)を行う可能性もあります。
つまり,借金の棒引き(帳消し)です。
国は,国債の利払いや元本の支払いを停止します。
最近では,1998年のロシア,2001年のアルゼンチンが記憶に新しいところです。
日本の場合,国債の主な引受先は,政府43%,中央銀行13%,銀行等34%,海外5%,個人4%,その他2%です(2006年3月時点)になっています。
デフォルトされれば、これらの保有先は,資金が返却されないため危機に直面するでしょう。
保有資産が大きく損なわれます。
債務超過に陥り,業務が機能しなくなる恐れがあります。
確かに,国債を保有している一般国民は多くありません。
しかし,だからと言って安心はできません。
私達の預貯金,保険、年金などの資産も大きく損なわれます。
なぜなら,それらの資金で大量の国債が買われているからです。
金融不安から,銀行などに預金引き出しが集中すれば,銀行の閉鎖,倒産が続出するという事態もあり得ます。
このようなとき,政府は預金封鎖(引き出し禁止)などを行うでしょう。
そうなれば,企業は資金繰りができなくなり,給料の支払いなども滞ります。
家計は生活資金を得られなくなり,生活費は底をつきます。
企業の倒産も急増し,社会は大混乱に陥ります。
3.国債の価格が暴落する
これは,国債に対する信用が低下して,国債の引き受け手(購入者)が激減することによって起こります。
国債が暴落することによって,国債の資産としての価値は大きく目減りします。
政府は,安い国債を売り,高い国債を買い戻す(償還)ことになるので,その差額の費用(利払い費)が増大します。
政府は,国債の価格が低下することによって,資金を調達することが難しくなります。
また,そのため,財政支出(国民へのサービス)を減らさざるをえなくなります。
福祉,医療,年金,教育,社会保障,安全などに対するサービスは低下します。
大幅な増税も避けられないでしょう。
国債の暴落は,同時に金利の高騰を意味します。
金利が高騰すれば,当然貸出金利も急騰します。
資金の借り入れが,家計にとっても,企業にとっても,大変厳しいものとなります。
借金苦の人たちが急増し,負債の多い企業の倒産に追い込まれるでしょう。
4.経済成長や物価上昇により,国債の価値が低下していく
国債残高の増加よりも,経済成長や物価の上昇が大きければ,国債の価値が下がり,借金としての負担は小さくなります。
これは,家計でも同じです。
例えば,同じ1千万円の借金でも,経済が成長し,給料が増え,物価が上昇していけば,実質的な価値は軽減し,返済は楽になります。
ただ,このようにして国債の負担が軽くなるとしても,それは長い期間が必要です。
長期間の経済成長と物価上昇により,それは初めて現実化してきます。
その意味で,この方法はいわゆるソフトランディング(軟着陸)といえます。
もちろん,このとき国債の所有者は,国債の実質的価値の下落により不利益を被ることになります。
保有者の資産が目減りすることは確かです。
しかし,急激な国債暴落よりも,痛手は少ないし,国民全体への悪影響も小さいでしょう。
政府も多くの国民も,この方途を望んでいるように思えます。
前提として,国債残高を増やさないことが必要です。
5.増税と歳出削減を続ける
これは,最も現実的で,現在でも試みられている政策です。
ただ,歳出削減(緊縮財政)といっても,実際の削減は困難で,抑制に留まっています。
増税も,国民の納得を得るのは容易ではありません。
確かに,小幅な増税と歳出の抑制は,巨額な国債残高の前では小さな力しか持ち得ません。
自ずと限界があります。
この方策だけで,国債残高を0にしようとすれば,仮に毎年6兆円ずつ減らしたとしても,百年も先のことになってしまいます。
しかし,小さな力でも,積み重ねれば大きな効果を発揮します。
着実なこの方法を軽視できません。国もこの方向を堅持すべきでしょう。
以上より,国の債務を減らす解決策は,上の4と5のミックスが中心になると考えられます。
長期間をかけて国債残高を縮小していくというのが最も現実的方途でしょう。
ただ,この方法は,将来の国民に対し,少しずつ現在の借金の付けを回すことも事実です。
これは,多額の住宅ローンの返済を将来の子孫にも少しずつ負担させていくのと似ています。
しかし,膨大な国の借金を減らすには,長い時間と多くの国民の努力が必要なこともまた確かです。
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